temperature of the kiss〜キスの温度〜 結婚編・【きゅう】完結
秘書の岡田さんに何かを告げた後・・・
何も言わず、その鋭い目で部屋に入るよう促した司。
さっきからずっと背中を向けたまま・・・
窓から見える美しい夜景を煙草片手に眺めている。
アンティークのライトがぼんやりと その姿を照らし出し、
ガラス越しには、彼の背中をただ黙って見つめている あたしがいた。
罵声を浴びせられることを覚悟していたのに、声を荒らげることもない。
いつになく冷静な態度に やっぱりあたしから言葉を発することができず
自分自身に対しての苛立ちからか、手にしていたバッグの柄をギュウっと握り締めた。
いくら土下座で頼まれたとはいえ・・・
引き受けてしまった浅はかだった自分。
いづれバレてしまう日が来るかもしれないという予想もできたはずなのに。
今更ながら自分の起こした行動が腹だたしく思えてきて・・・
悔しくて・・・情なくて・・・
もしかしたら・・・
あたしよりも司の方が悔しかったのかもしれない。
知らない男の腕に抱かれている姿を目の当たりにしたのだから。
・・・もしも逆の立場だったら?・・・
・・・もし、知らない女性と司が抱き合ってる姿を見てしまったら?・・・
あの時の司のように・・・
何も見ていなかったかのように・・・
冷静にビジネスの話ができただろうか?
きっと狼狽して・・・司を責めたかもしれない。
・・・今、あたしにできることは・・・
・・・自分の軽率だった行動を素直に認め・・・
・・・そして心をこめて謝ること・・・
それしかない。
『さっきは・・・
本当に・・・ゴメンなさい』
怒鳴られるのも百も承知・・・
だったのに・・・
聞こえているのか、いないのか・・・やっぱり何も言わない司。
何も言わず黙っていられるよりも・・・
責められたほうが・・いい。
この短い沈黙でさえ、果てしなく長い時間に思えてしまう。
・・・お願いだから・・何か言ってよ・・・ねぇ・・・
『どんな・・・気分だった?』
しばらくの沈黙の後で・・・司が静かに口を開いた。
その声は落ち着いている。
けれどそれは自分の感情を司なりに抑えているんだと思った。
聞き返してはいけない質問だと分かっているのに
その意味を理解できないあたしは 震える声でその背中に問いかけた。
『・・・どんな・・・って?』
『俺以外の男に抱きしめられた気分だよ・・・』
・・・気分・・って・・・
・・・そんなこと・・・
・・・そんなこと・・聞かないで・・・
『俺は・・・すげーショックだったよ』
・・・ドクン・・・
その言葉の意味が痛いほどよくわかるから・・・余計に辛い。
『ゴメンなさい・・・あたし・・・』
『どう・・・落とし前つける?』
・・・えっ?・・・
・・・落とし前?・・・
『おまえがしたことの落とし前・・・』
煙草をもみ消すと そのままソファーに腰を下ろし
ようやくあたしに視線を移した。
表情ひとつ変えずに あたしを見つめる真っ直ぐな瞳。
その瞳に何も言い返すことができない。
あたしは腹をくくった。
『いいよ・・・
落とし前・・・・・・なんでも受けるよ。
それで司の気が済むなら・・・』
・・・もう覚悟は・・・できてる・・・
・・・どんな落とし前でも・・受けるよ・・・
・・・あんたを傷つけてしまったあたしの償い・・・
・・・たとえ、離婚することになったとしても・・・
『本当か?』
『うん』
『・・・そうか。
今の言葉に 二言はねーだろうな?』
『うん・・・』
『おまえ・・・このまま仕事続けるつもりか?』
『・・・うん。
でも辞めろって言うなら、今すぐ辞める』
・・・それが落とし前なら・・・
すると呆れた顔でため息を吐く司。
『そんなもんだったのか?・おまえの仕事に対する気持ちは・・・』
・・・?・・・
・・・それって・・・
・・・どういう・・意味?・・・
・・・辞めろって言ってるんじゃないの?・・・
『そりゃ・・・あたしだって・・・続けたいけど・・・』
小さな声でブツブツと言っていると・・・
『ひとつ提案がある』
・・・提案?・・・
『俺はおまえに今更仕事を辞めろなんてことは言わねぇ。
イキイキと働いてる姿、見せつけられちまったからな』
・・・いつのまに見てたの?・・・
・・・全然気づかなかった・・・
『そこで・・・だ』
あたしはゴクリと息を飲んだ。
『明日から、いや今日から”道明寺つくし”として正々堂々と名乗ってもらう』
思いがけない提案にあたしは戸惑いを隠せなかった。
結婚したとはいえ、公にしないことをお願いしたのは・・・あたしだったから。
『そもそも結婚してるのに・・・身分を隠していること自体、おかしい。
おまえがちゃんと名乗れば今日みたいなことは起きることもねーし、
悪い虫も寄って来ねーはずだ。
違うか?』
『そ、それは・・・』
『いくら隠しても いずれはバレる時が来る。
あとでバタバタ大騒ぎするよりも、今言っちまったほうが楽だと思わねーか?』
『それは・・・そうだけど・・・』
『もう、いい加減・・・俺を落ち着かせてくれ・・・
毎日スゲー不安なんだ・・・
結婚したとはいえ、おまえが誰かに連れ去られそうで・・・
あ〜あ、情ねーよな・・・
道明寺財閥 後継者の俺が自分の女房にヤキモキするなんて・・・』
・・・司・・・
弱気なところを見せない司が、顔を赤らめながら苦笑する姿に
今まで守ることしか考えていなかった自分が いかに幼かったか・・・
頭をガツンと殴られたような気がした。
・・・そうだ・・・
・・・あたしは道明寺司の妻・・道明寺つくしなんだ・・・
・・・それなのに・・・
・・・何、やってるんだろう・・・あたしは・・・
・・・本当に・・・大バカだよ・・・
・・・自分の身勝手さにあきれちゃう・・・
『司・・・
あたしもそうしたい。
道明寺つくしって名乗りたい』
すんなりあたしが同意するとは思っていなかったのか・・・
『おまえ・・・本当にいいのか?
そうなったとしたらおまえは常に注目されるし・・・
不愉快な思いだってするかもしれねーんだぞ?』
・・・何よ、自分から提案してきたくせに・・・
・・・急に尻込みするような言い方するなんて・・・
『それに・・・』
『それに?』
『やきとり 食えなくなるぞ?』
・・・あらら・・・
・・・何を言い出すかと思ったら・・・
『そんなこと余計なお世話よ。
あたしは一生食べ続けるわよ。
どんなに高級なものより・・・庶民の味のほうがあたしには合ってるから』
『・・・ったく・・・ホントおまえらしいな・・・』
苦笑しながらあたしの腕を掴み、自分のもとへ引き寄せる司。
ふわっと香るコロンがあたしを刺激する。
『付き合ってやっても・・・いいぜ』
『えっ?』
『・・・一緒にやきとり・・食ってやるよ・・・』
ぶっきらぼうに呟く。
その言い方が いかにも司らしくて・・・
思わず笑みがこぼれてしまう。
『それから・・・もうひとつ。
あんなモデルなんてマネ・・・絶対するんじゃねーぞっ!』
長い指先でぺチンとあたしのおでこを弾く。
ちょっぴり感じる痛み。
でもその痛みは司の優しさと繋がっているってことをあたしは知っている。
『うん・・・もう・・・しない』
『あの男に抱きしめられてるおまえ見た時・・・
すげー妬いた。
生意気なあのガキをぶん殴ってやろうとも思ったぐらいだぜ。
あんな背中丸出しのヒラヒラしたドレスなんか着やがって・・・』
『ゴメン』
『///でも・・・その・・・すげー綺麗だったぜ///』
・・・司・・・
『///金輪際、俺以外の男にあんな姿見せるんじゃねーぞっ!!!///
いいなっ!!!///』
テレながら大声を張り上げる司。
・・・その気持ちが嬉しくて・・・
・・・それにつられたのか・・・
・・・涙と共に・・・
・・・あたしの口から自然に零れ落ちた言葉・・・
『・・・る』
『ん?』
『愛してるよ・・・司』
涙で震える声でそう呟くと やがて大きな両手が優しくあたしの頬を包み込んだ。
そして司は笑顔で熱いくちづけをあたしに落とした。
・・・結婚してから恥ずかしくて なかなか口にできなかったけれど・・・
・・・愛してるって・・・
・・・ちゃんと言えた・・・
・・・今まで与えられるばかりの愛だったけど・・・
・・・今度はあたしが与える番だね・・・
そしてそのままソファーに押し倒されて・・・
司のくちびるがあたしの首筋を這い・・・
右手があたしの胸元のボタンに・・・
RRRRRRRRRRR・・・・・・
突然、部屋の電話が鳴り響く。
最初は気づかないフリをしていた司も
そのコールの長さに舌打ちし、「あ〜あ・・・いいところだったのによ」とブツブツ言いながら
受話器を手にした。
あたしは そのやりとりをソファーの上から静かに見守っていた。
『あぁ・・・わかった。すぐに行く』
そう言って電話を切ると、脱いだシャツを再び着直した。
・・・これからまた仕事なんだね・・・
・・・なんか寂しい・・・
その背中を見つめそう思った。
『何やってんだ? ほら、行くぞ』
ソファーに寝転んだままのあたしに手を伸ばす司。
・・・???・・・
『これから仕事なんでしょ?
あたしには関係ない・・・』
『それが・・・関係アリアリなんだなぁ〜♪』
『どういうこと?』
『みんなに教えてやるんだよ』
・・・教える?・・・
・・・って何よ・・・ソレ?・・・
・・・100%理解不能・・・
『だから・・・言ってる意味が全然・・・』
『おまえが俺の女だって 全世界の男共に教えてやるんだよっ!』
『そ、それって・・・まさか!?』
『こういうもんは早いほうがいいだろ?
もう、みんなお待ちかねだぞ。
覚悟はいいな?道明寺つくしさんよ。
今更、もう逃げられねーぞ!』
ニヤリと微笑むその笑顔に
『の、臨むところよ!!!』
負けず嫌いのあたしは鼻息を荒くして・・・
その大きな手を握りしめた。
こうして司と共に結婚会見に臨むこととなり・・・
あたしの顔は事実上、全世界へと配信されてしまったのである。
落とし前・・・・
あいつったら・・・最初からこうなるように岡田さんと段取りをつけてたのね!
あたしは まんまと乗せられちゃって・・・
ついつい幸せの笑顔をカメラの前で振りまいちゃった。
しかも何も着飾らない本来の姿で・・・
こうなるならもっとカワイイ洋服着てれくればよかったな・・・
な〜んて・・・ちょっと後悔しちゃったりもするけど。
・・・実際のところどうなのだろうか?・・・
・・・これでよかったのかな?・・・
自分自身に問いかける。
・・・うん、これでよかったんだよ・・・
もう一人のあたしがそう呟いた。
きっと明日はもっと大変なことになりそう。
仕事どころじゃないかも!?
『なぁ・・・どうする?』
記者会見の帰り道・・・
乗り込んだ車の中で
大きな胸にスッポリとおさまっていたあたしの頬にくちづけする司。
『///どうするって・・・なにが?///』
意表を突いた行動に動揺しつつも・・・必死に冷静を装うとするあたし。
『さっきの・・・続き・・・』
あたしの髪を撫でながらそっと耳元に囁く司。
『///つ、続きって?////』
・・・わかってるんだけど・・・
・・・わかっちゃいけない気がする・・・
『ホテルの・・・続き♪』
『//こっ、こんなところでそんなこと言わないでよ!///』
『別にそんなビックリするようなことじゃないだろ?
俺たち愛し合ってるんだし♪
何せ・・・世界公認だしよ』
・・・絶対・・・こいつあたしをからかってる!・・・
・・・でもそんなところが憎めない・・・
・・・恐るべし・・・我が夫・道明寺司・・・
『///もう!あんたって人は!!!///』
照れ屋で・・・
頑固で・・・
おまけに素直じゃない
こんなあたしだけど・・・
これからもどうぞ・・・
お手柔らかに・・・
・・史上最強で・・・
・・・史上最悪な・・・
・・・愛しのマイ・ダーリン♡・・・
end
あとがき
今までキスの温度を応援してくださって
本当にありがとうございました。
かなり好評な作品だったので・・・続編があるんですよ。
HPでは5話までのUPでした。
途中でSTOPしちゃったんですよね、これが。
(詳しく知りたい方は更新ブログ『つくしんぼ』をご覧下さいね。2007年3月以降)
まだその先を書き書きしていないので、
取りあえず続編をUPしようか悩んでおりまする。
あぁ・・・どうしましょ。
他の作品を先にUPしたほうがいいのでしょうか?
遊びに来てくださったみなさん、どう思いますか?
ご意見お待ちしておりまする^^
とりあえず番外編は2話(内、キリ番1話)ありますので、そちらを先にUPしようと思ってます。
しゃおしゃお☆
←いつもいつも愛のポチありがとです^^皆様には感謝感謝です(涙)。
〜キスの温度・番外編☆安藤くんの巻・・・行っちゃいますかぁ?〜




コメント
はじめまして
はじめましてヾ(*´∀`*)ノ
二次小説というものを
初めて知りました。
他のかたの作品も少し読ませていただきましたが しゃお☆しゃおさんの
作品が とっても私の中で 登場人物らしいセリフや行動で きゅ〜ん としました!
これから 楽しみに 読ませていただきます!
なんだか ドキドキして
今日は 眠れないかもです(*≧∀≦)
がんばってくださいヾ(*´∀`*)ノ
No:21 2008/03/30 00:40 | セラピ #BFJTYZbEURL[ 編集 ]
セラピさまへ
初めまして(#´∀`#)。
管理人のしゃお☆しゃおです。小さなブログのお部屋に遊びに来てくださって ありがとうございまする。もう駄文すぎて恥ずかしいんですよ、実は(笑)。でもセラピさまに そう仰っていただき とっても嬉しいです!
こちらこそ嬉しくて眠れないかも♪
これで1年間はガンバれそうです(笑)。
また遊びに来てくださいね!待ってまぁ〜す^^
No:22 2008/03/31 11:29 | しゃおしゃお #-URL[ 編集 ]
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