キスの温度〜Marriage diary 2〜【に】
『へぇ〜
ウワサには聞いてたけど、想像以上に美人じゃね?』
『だろ?
一体どこからこんな美人連れてきたんだ?』
『あんな美人が秘書だったら 休日返上で毎日でも仕事するよ。
もちろんプライベートでも一緒だけどな♪』
『肝心の次期後継者は こんな美人を傍に置いて
手も出さないなんてホント信じられねーよな?』
『あいつ、やっぱり女を見る目がねーよ』
『そうだな、あー見えてかなり経験不足だし(あらゆる意味で)、
女の品定めが わかんねーのかもな。
あぁ〜かわいそ〜
同じ男として同情するよ』
『アハハハハ・・・言える言える』
・・・あのぉ・・・・・
・・・あのですね?・・・
・・・あたし・・ここにいるんですけど?・・・
大きなテレビの画面を見つめながら、
あたしが ここにいることも忘れて
いかにも”彼等らしい”軽快なトークが続いている。
『ちょっとぉ!
二人ともいい加減にしなさいよね!
たかが秘書じゃない?
つくしの方が ぜ〜っっったい!!!お似合いなんだからねっ!』
愛らしい頬をふくらませ
彼等の間に割って入る あたしの弁護人・・・滋さん。
『そうですよ!
いくら先輩より『美人』で、『スタイル』がよくて、『大人』だとしても
道明寺さんに限って 他の人に心変わりするなんて ありえませんよ!』
・・・桜子・・・
・・・微妙なフォローありがと・・・
『美人』・・・確かに。 あたしとは比べ物にならないぐらい。
『スタイルがいい』・・・同感。 身長も高いしあいつと並んでも違和感なし。
『大人』・・・納得。 あたしには持ち合わせていないものを持っている。
・・・やっぱり、男の人ってそういう人が 好みなのかなぁ・・・
頬杖をつきながら気づかれないように 小さなため息をひとつ。
美作さんのお母様お手製のチーズケーキをひとくち頬張ると
想像以上に甘酸っぱい味が口の中に広がって・・・
今のあたしの複雑な心境を物語っているかのよう。
テレビ画面に映るあいつは クールな表情でインタビューを受けている。
こんな表情・・あたしの前では1度も見せたことがない。
仕事の『ON』と『OFF』をしっかり切り替えて 邸に戻ってくるから、
一緒にいるときの ガキみたいなあいつが、
テレビに映っている 大人のあいつと同一人物だなんて信じられない。
でも・・・
”あの人”は違う。
あたしの知らない『ON』のあいつを知っている。
一度だけ・・・
そう・・・
たった一度だけ・・・
すれ違っただけなのに・・・
あの日から ”あの人”の存在が頭から離れない。
あの瞳。
ほんの一瞬だけど 感じ取った何か。
ただ それがあたしに対して プラスなのか、マイナスなのか。
その「何か」が自分でも解らないんだから・・・厄介。
その日の夜、差し障りがない程度に聞いてみようとも思った。
”あの人”のことを。
けれど、聞いてどうなるというのだろうか?
聞いたとして 何かが変わるというのだろうか。
ただのあたしの思い過ごしかもしれないのに。
妙な勘繰りはあたしには似合わない。
何よりあいつが そーいうの嫌がると思った。
だから・・・
その思いを自分の心のポケットにしまったんだ。
なのに・・・
払拭しきれていない気持ちが 未だに現在進行形。
窓際の大きなソファーには”例の彼”が
今日も子供みたいにスヤスヤと寝息をたてている。
そんな無邪気な姿を見ていると
小さなことでくよくよしている自分が情けなく思えてくる。
・・・今までこんなことなかったのに・・・な・・・
たった3日間のNY出張だというのに・・・
もしも二人の間に何かあったら・・・
と、考えたくもないような嫌な想像をしてしまう。
・・・ハァ〜あたしらしくない・・・
・・・こんな気持ち初めてだよ・・・
・・・これって・・もしかして・・俗に言う・・・
・・・”やきもち”ってやつなのかな・・・
・・・ん?・・・
・・・やきもち!?・・・
・・・ない、ない、ない、ないっ! そんなのありえないつーの!・・・
・・・あたしがやきもちなんて・・・
・・・絶対ありえないっ!・・・
・・・元はと言えば・・・
・・・”あいつ等”のせいだわ!・・・
・・・あまり そのことを考えないようにしてたのに・・・
・・・あたしの前で「美人だ、美人だ」って連呼しすぎっ!・・・
未だに思うんだよね。
どうして あたしなのか。
どうして あたしを選んだのか。
だって世の中には”令嬢”という煌びやかな肩書きがついちゃう人なんて
たくさんいるのよ!?・・・多分。
(統計を取っていないので自信がない)
あたしなんて その辺にゴロゴロいる一般庶民のひとりだよ?
おまけにビンボーなのに あいつに想われるなんて
天と地がひっくり返ったよーなもの。
第一。
あの頃、楓さんに 思い出すだけで ゾッとするような 嫌がらせをいっぱい受けたもんね。
身分差。
格差。
全てにおいて相応しくない・・・と。
まぁ、今ではそれなりに 認めてもらってるみたいだけど・・・多分。
(これも自分なりの解釈なので自信がない)
しかし・・・何なのよ?
「話があるから来い」って言われて来てみれば・・・このザマだわ。
「話って何?」って聞いたら、
「別に、なんとなく呼んだ・・・」・・・ですって!?
・・・何となく・・・って何よっ!!!・・・
貴重なあたしの休みを返せ!
美作っ!!!西門ぉぉぉぉぉ!!!
『あぁぁ!!!もうイヤっ!!!』
シーン・・・・
さっきまでテレビ画面に釘付けだった4人の視線が・・・
えっと・・・
キョロキョロと周りを見渡してみる。
ソファーには大きな子供が眠っているけど・・・
彼を見てるわけじゃ・・・ない。
って・・ことは・・つまり・・・
・・・今の大声・・・あたし・・デスカ?・・・
思わずハッとして口元を押さえる。
しかし・・もう遅い。
4人の視線はあたしに向けられたままだ。
・・・と、とにかく!この場を何とか切り抜けなければ!・・・
『あっ、あぁ・・・違うの。
ちょっと考え事してて・・・
し、仕事でいろいろトラブルがあって・・・
つい思い出しちゃって・・・
だから、つまり・・・
あいつのことで叫んだわけじゃないから・・・
アハハハ・・・』
・・・何言ってるのあたし!?
これじゃ まるで『そうですよ』と認めているみたいじゃない!・・・
4人の視線は今もなお あたしから離れない。
『あっ、あたしこれから買い物に行かなくちゃいけないの。
あいつが今夜 帰ってくるから・・・
食事の用意とかしなきゃいけないし・・・
そっ、そろそろ帰るね』
慌てて席を立つあたしに 滋さんが不思議な顔をしてる。
『そろそろって・・・今来たばかりじゃない?』
確かに。
時計を見れば ここに来てまだ15分しかたっていない。
だけど・・・
ここにいたら 考えたくもない余計な妄想がふくらんでしまいそうで・・・
だから・・・
『とっ、とにかく帰るね!』
手元にあった 紅茶を口にし、
『あっ、熱ぅぅぅ!!!ごっ、ごちそうさま!』
舌のヤケドなんて 気にする余裕もないまま、
あたしはその場から逃げるように立ち去った。
・・・『本当にわかりやすいな』・・・
美作さんが苦笑していたとも知らずに。
『ハァ〜
何やってるんだろ・・・あたしは』
・・・あぁ・・それより舌がヒリヒリするなぁ・・・
美作さんの家を慌しく飛び出して、
とりあえず大きな通りに出てみたのはいいけど・・・
歩き出す気力がなくて、その場にしゃがみこんでしまったあたし。
『こんなところに座ってると、周りに迷惑なんじゃないの?』
そんな言葉が頭から降ってきて・・・
ようやく自分が通行人の妨げになっているということに気がついた。
『すっ、すみません・・・』
ペコペコしながら 振り返ると・・・
そこにはさっきまで眠っていた子供・・・
もとい。
彼が立っていた。
『どっ、どうしたの?類』
『それはこっちが聞きたいんだけど?』
眠そうにあくびをひとつ。
『あっ、あたしはこれから買い物・・・』
『買い物?』
『そっ、そうだよ!食材とか・・・いろいろ・・・』
『お金もないのに?』
・・・へっ?・・お金?・・・
・・・はっ!・・・
な・・・い。
ない・・・ない、ない!ない!!!
あたしの手にあるはずのバックがっ!
・・・ど、どうしよう!・・・
もしかしてボーっとしてたから誰かに取られたのかも・・・
・・・サァー・・・
血の気がひいていく・・・
『・・・どうしよう。
あのバッグには・・ケータイとか・・・
誕生日に優紀からもらったポーチとか・・・
優菜さんから借りてる本とか・・・
とにかく大切なものが入ってて・・・ブツブツブツ・・・』
『これでしょ?』
・・・へっ?・・・
・・・あっ、ソレっ・・・
目の前に掲げられたのは、
まぎれもなくあたしのバッグだった。
あいつに買ってもらった さんきゅっぱ。
(¥3980と言いたかったらしい)
しかもバーゲンで!
(そこまで言う必要はないと思うのだが・・・)
『ど、どうして・・・類がこれを?』
『あきらの家にあった』
『あ・・・ほんとに? よかったぁ〜』
・・・慌てて出てきたから 荷物のことなんて すっかり忘れてた・・・
『てっきり盗まれちゃったのかと思ったよ。
ありがとう類、わざわざ持ってきてくれたんだね』
ホッとしながら手を伸ばすと なぜか高く 宙に浮く。
・・・んっ!?・・・
ジャンプしても届かない。
ふいに その主の顔を見上げれば、プププって笑ってる。
『ちょ、ちょっと類!
冗談はやめてよ!子供じゃないんだから!』
思い切り頬をふくらませるあたし。
これじゃまるで パン喰い競争みたいじゃないのよ!?
『動揺してたんでしょ?』
『・・・えっ』
『バッグ忘れちゃうぐらい』
その一言であたしの動きが止まった。
『違う?』
・・・ナニ・・イッテルノ?・・・
『そうなんでしょ?牧野』
あたしの心を探ろうとする類。
・・・いきなり何を言い出すの?・・・
『そっ、それは・・・』
まっすぐな瞳で見つめられると・・・
どう答えたらいいのか解らない。
何もかも見透かされているようで・・・
『じゃあさ、ゆっくりそこのカフェで聞かせてもらおうかな。
まだ11時だしね。
夕食の用意はまだ早いんじゃないの?』
類はあたしの返事も聞かずにスタスタと、
斜め前にある 如何にも高級そうなカフェに入っていこうとする。
・・・えっ?そこって・・もしや?
ちょ、ちょっと待ってよ!
そこは”セレブしか入らない”という噂のカフェじゃない!?・・・
しかも1万円のコーヒーがあるという・・・あの有名なっ!
「コーヒーなんてインスタントで十分よっ!」
・・・って思ってる 未だに貧乏性が抜けないあたしには 無縁の場所だわ。
・・・・帰ろう・・・
・・・うん、それがいい・・・
ドキドキ 緊張するカフェなんて のんびりした気がしないわ。
『類、 あたし帰るから それ返して』
『だーめ。人質♪』
・・・人質って、あんた・・・
・・・バッグは人間じゃないんだから・・・
『来るの?来ないの?』
バッグをヒラヒラさせながら ニヤリ。
・・・ハァ〜・・・
・・・降参・・・
『ちょ、ちょっと・・・だけだよ?』
その返事にニコっとする天使の微笑み。
訂正。
悪魔の微笑み。
・・・あんたのマイペースに あたしが勝てるはずがないじゃない・・・
それを知ってか知らずか・・・
当の本人は何だか嬉しそう。
そんな類と対象的なあたしは、
渋々高級カフェに入ることになってしまったんだ。![]()
愛のポチをいつもありがとうです^^
本当なら午前中にUPしたかったのですが・・・夕方になってしまいました^^;
ブログランキングを外すと申し上げたのですが、こちらの方から遊びに来てくださっている方も
多いので、もうしばらく続けてみることにしました。
*Marriage diary 2〜【に】は修正しておりません。
HPにUPする際 修正するかもしれません。
〜Marriage diary 2〜【さん】読んじゃう?〜






