心、ほどいて・・・第8話 (リレー小説)
『う〜ん、どれにしようかなぁ♪』
クローゼットの中から洋服を引っ張り出して、
鏡の前で行ったり来たり。
「着こなせる女になれ」・・・なん〜て、あまりにもサラっと言うから
ちょっとプレッシャー感じちゃうけど。
こうして誰かのために服を選ぶのってすごく嬉しい。
同じベッドで眠ることも・・・
一緒にごはん食べることも・・・
「そんなことが嬉しいの?」って
誰かに笑われてしまいそうだけど・・・
そんなことだから 嬉しい。
ちょっとしたやりとりでさえ、そこに幸せを感じるんだ。
きっとこれが・・・
あたしの”幸せのカタチ”なんだよね。
・・・これからも このカタチが もっともっと増えていきますように・・・
花沢類が帰国してからも、
道明寺は相変わらずの毎日だけど・・・
前より帰宅する時間も早くなったし、
休日も一緒に過ごせるようにもなった。
最近の道明寺は以前にも増して すごーく優しくなって、
ちょっとした気遣いがくすぐったいぐらい。
今まですごく不安で・・・
本当にあたしは必要な存在なのかな?って
思い悩んだ時もあったけど・・・
それを忘れてしまうぐらい充実した日々が続いている。
今日は 待ちに待った休日。
これから道明寺とデート。
この前はあたしの提案で公園でのんびりデートだったけど・・・
今日のプランは道明寺におまかせ。
どこに連れて行ってもらえるのか 朝からちょっとドキドキ。
ベッドの傍らに座り、顔だけだして
綺麗な寝顔を覗き込んでいると・・・
それは一瞬の出来事で・・・
・・・///きゃっ///・・・
『///ちょ、ちょっと!ダメだってばぁ!///
///洋服がシワシワになっちゃうよ!///』
無理やり引きずりこまれたベッドの上で 足をバタバタ。
『そんなの気にするな。また買ってやる』
目を覚ましたばかりの飢えた猛獣があたしに襲いかかる。
『///こ、これから出かけるんでしょ?///』
『午後にしようぜ♪』
着替えたばかりのあたしのボタンを器用に外していく道明寺。
・・・このままじゃ、まずい・・・
・・・せっかく楽しみにしていた休日が・・・
・・・逃げ出さなきゃ・・・
ちょうどその時、タイミングよく 呼び鈴がなった。
『///あっ、誰か来たみたい///』
ベッドから身体を起こそうとすると
『出なくてもいい』
道明寺が再びあたしの身体を押し倒す。
『///もしかして ママにお願いしてた荷物かもしれないから・・・///
///ちょっと待ってて・・・///』
『ちっ(怒)』
・・・///ふぅ〜・・助かったぁ///・・・
呼び鈴の神様に助けられたあたしは
子供のように甘える道明寺をなだめ、
外されたボタンを直しながらパタパタと玄関に向った。
ドアスコープから覗くと・・・
・・・あっ・・・
その存在を確認すると 一瞬間を置いて
戸惑いがちに ドアを開けた。
『おはようございます、牧野様。
お休みのところ失礼致します』
深々とあたしに頭を下げた背の高い紳士。
『おはようございます、奥村さん』
つられるように頭を下げた あたしは
突然の訪問に 動揺を隠せなかった。
奥村さんは道明寺が最も信頼している秘書さんで、
あたしとも顔見知りだ。
こっちに来てから何かとお世話になっている。
とくに買い物の手配とか。
『あぁ、えっと・・・
今日は何か?』
『副社長は・・・?』
・・・やっぱり・・・
案の定その名前が出てくる。
『あ・・・今起きたところです。
呼んできますね』
複雑な気持ちで奥村さんに背を向けると
『ここには来るなと 言ってあるはずだ』
いかにも不機嫌そうな顔をした道明寺が
そこに立っていた。
『・・・道明寺』
『はい、それは重々承知しております。
が、しかし・・・今日こそは会議に出ていただきませんと。
先方がしびれを切らしておりまして・・・』
『俺には関係ねーよ。
全部おまえらに任せるって言ったはずだろ?』
『いや・・・それが・・・
副社長直々にお会いしたいそうで・・・』
『今日は牧野と過ごす。
・・・帰れ』
『副社長!
それでは 今までのプロジェクトがっ』
『いいから、帰れっ!』
突き放す強い口ぶりで、
それ以上何も言わず道明寺は そのまま部屋に戻ってしまった。
声を荒らげる道明寺を見るの久しぶりだ。
奥村さんは「参ったな・・・」と、苦笑している。
『ちょっとここで待っててください』
そう奥村さんに告げると、道明寺の後を追った。
『ねぇ、道明寺・・・大切な会議があるんでしょ?
あたしのことはいいから仕事に行って』
不貞腐れたまま ソファーに寝転んでいるその背中に声をかけると、
「やだね」と一言。
『ほら、子供みたいなこと言わないで。
奥村さんだって申し訳ないのを承知の上で来てくださってるのよ。
道明寺が行かないと困る人がたくさんいるんでしょ?』
本当は・・・
こんなことを口にしたくない自分がいる。
行かないで・・・と もうひとりのあたしが叫んでる。
・・・ひとりにしないで・・と・・・
『ねっ、道明寺。
あたしは大丈夫だから。
また次があるじゃない』
・・・「行って」、「行かねー」・・・
しばらく こんな やりとりが続いて・・・
先に折れたのは・・・道明寺だった。
観念したように深い息を吐き、
「ごめんな」とあたしを抱き寄せた。
その温もりに涙がこぼれそうになった。
けど。
泣かなかった。
自分でブレーキをかけたから。
『じゃあ、行ってくるわ。
この埋め合わせは絶対するから』
着替えをすませた道明寺が名残を惜しむように
あたしにくちづけを落とす。
『ううん、いいの。 行ってらっしゃい』
『早く帰ってくるから』
『うん』
『鍵、ちゃんとかけろよ』
『わかってるって。
子供のお留守番じゃないのよ』
『まだガキだろ?』
『もう!
ほら、奥村さん待ってるよ』
あたしは いつまでも 出かける様子のない道明寺の大きな背中を
「行った、行った」と、押し出した。
カチャ・・・
ドアに鍵をかける。
まるで 自分の想いを封印するように。
またひとりぼっちになってしまった。
せっかく選んだ服も 今では何の意味もない。
奥村さんがやって来たとき・・・
きっとこうなるんじゃないかって・・・ 思ってた。
あの人がここに来るのは余程のことだし。
プライベートにまで顔を出さない人だもん。
とても優しくて、いい人。
それはわかってる。
わかってるよ?
でも・・・
あんなにも親切にしてくださっている奥村さんに対して あたしは・・・
最低なことを思ってしまった。
最低なのは うわべでは平気な顔をして
心の中ではワガママばかりを言っている あたしの方なのに。
気づけば深夜になっていた。
冷たいシーツに包まって 道明寺の帰りを待っていた あたしは
なかなか眠りにつけなくて ワインをひとくち飲んでみたものの・・・
睡魔は一向にやってこなかった。
暗い闇夜の中から月がぼんやりと顔を出している。
まるで 自分の心を表しているかのように。
道明寺が出かけた後、 何もすることがなくて
掃除や読書・・・いつもと同じように過ごした。
ママにお願いしていた小包は 結局届くことはなかったけど。
心の中で あることが引っかかっていた。
・・・「今日こそは会議に出ていただきませんと」・・・
奥村さんが 迎えに来たときに そう言ってた。
・・・「今日こそは」・・・
それって・・・どういう意味なんだろう。
・・・「今日こそは」・・・
・・・「今日こそは」・・・
・・・えっ・・・
・・・それって・・・![]()
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〜続きは雪乃ちゃんのHPにて〜



