sun and moon

since’06.11/25 。HP復活しちゃいました。こちらはtext blogです^^
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red sign12(TSUKUSHI side)

►2008/02/29 09:06 

ハンドルに頭を乗せたまま、目を伏せ、何か考えているクリス。










『まさか・・・そんなこと・・・』










そう独り言を呟きながら、自分自身に首を振った。








薬指に光る指輪。









愛おしそうにそっと撫でる。








きっと彼から貰ったものだろう。









昨日、ビーチで話を聞いてた時も その宝石(いし)に触れていたから。







声をかけるタイミングが掴めなくて、





寂しそうな横顔を見つめていたあたしに気がついたクリスは






「ごめんなさい。何でもないの」と涙を堪えながら笑った。










それは自分の気持ちを懸命に封印しようとしているように思えた。








まるで数時間前の自分を見ているような錯覚。









やっぱり、あたしたちは似ているんだ。











クリスは”幸せになって欲しい”と言ってくれた。









あたしだってクリスに幸せになってほしいよ?






















『行きましょう、時間がないわ』











『待って、クリス』









何事も無かったような素振りで、



再びアクセルを踏もうとするクリスをあたしは引き止めた。











『どうしたの?つくし。時間が・・・』










『そんなこと、どうだっていいの』









しきりに時間を気にするクリスの手を掴んだ。











『つく・・・し?』












『無理しないで・・・クリス。





本当は今でも逢いたいんでしょ?』








あたしの突然の言葉に驚いたクリス。




彼女は唇を噛みしめ俯いた。











『・・・たい。







逢いたいに決まってるじゃない。







でも・・・今更、アランに逢っても仕方ないもの。






もう終わってるのよ』













・・・アラン・・・











初めて聞いた、彼の名前。










その横顔から伝わるもの。








切なさと・・・







恋しさと・・・








そして・・・









ずっと引きずってきた想い。













クリスは堪えていた涙をとうとう我慢できずに、嗚咽した。








解るよ・・・痛いほどに。








離れた者しか解らない・・・胸の痛みを。







ずっと傍にいたかった。







お金も、地位も、名誉もいらない。








ただ、愛する人と一緒にいたかった。








それだけだったんだよね?





















しばらく泣いてスッキリしたのか、クリスは再びハンドルを握った。







あたしは助手席から美しく輝く最後の海を見つめていた。





でもそれは、ただ見つめているだけで あたしの心は別の場所にあった。








もしかしたら・・・









もしかすると・・・










わずかな期待が、あたしを動かす。










あのタクシードライバーがアランだとしたら?







もしその可能性があるとしたなら・・・








それを知ってしまったあたしは・・・どうすればいい?







何か手がかりは無いだろうか?








昨夜のやりとりを微かな記憶の中で思い出してみる。








Q・・・どこから乗ったの?








A・・・覚えてない。






歩いていたら1台のタクシーがあたしの前に止まったの。













Q・・・タクシーの色は?






A・・・暗くて覚えていない。









Q・・・じゃあ、タクシードライバーはどんな人だった?




A・・・後ろからでしか見えなくて・・・でも若かった。




多分・・・20代後半かな?





とても明るくて、陽気な人。




初めて会った気がしないほど自然な人だった。











Q・・・何を話したのか覚えてる?






A・・・カタコト混じりでたわいもない話。















Q・・・他に何か・・・覚えてない?例えば特徴とか。







A・・・暗がりだったし・・・あまり見えなかった。









・・・あっ、そういえば・・・








・・・あった・・・









・・・あったじゃない・・・











・・・ほら・・・















『あーっ!!!!!』










あたしが大声をあげると、それに驚いたクリスは急停止した。









今度のあたしは驚かなかった。











急停止よりも もっと驚くことを・・・










あたしはその手がかりを思い出したのだから。












でも・・ちょっと待って。








これが本当に手がかりになるとは限らない。









もし期待させて・・・違ってたら?









落胆した彼女を置いたまま帰国するなんて・・・あたしにはできない。










じゃあ、このまま胸の中にしまっておくの?











どうする?











どうするの、あたし?













『どうしたの、つくし?ビックリするじゃない』














『あーえっと。




部屋にパスポート置いてきちゃったかも・・・』











とっさに出てしまった小さな嘘。








嘘も方便。











『えぇ?それは大変だわ!急いで戻らないと・・・。




そうだわ、先にホテルに連絡しておくわね』










ケータイを取り出したクリスをあたしは慌てて制止する。










『えっ?あぁ!!いいの、いいのっ。






とにかく戻ってくれればいいから!




きっと従業員の人も解らないと思うし。





秘密の場所に隠しておいたから・・・』











何言ってんの?あたし!?








秘密の場所って。








それって、どこよ?










あたしの”たくらみ”など知る由も無いクリスは、慌ててホテルへと車を走らせた。
















申し訳ない気持ちもあったけど・・・








少しでも役に立ちたい気持ちが 今のあたしを優先させている。










これからどうなるのか全然解らないけど・・・










・・・後悔しないように・・・











少しでもその可能性があることを祈りながら車を降りた。










クリスも一緒に部屋に来てくれるって言ったけど、




それではあたしの作戦はパーになってしまう。







だから丁重にお断りをした。











あたしは部屋に向うふりをして、




クリスに気づかれないように裏口からホテルを抜け出した。










そして近くに停まっていたタクシーに乗り込み、カタコトの英語で事情を話すと




ドライバーの案内でタクシー会社に向かった。






ドライバーの話によるとかなり出入りが激しい業界で、




同じ会社でも全く知らない顔もいるみたい。










それから、ハワイのタクシーは日本のように”流し”はしていないらしい。








空港や観光地から出ているのがほとんどみたい。















あたしが昨夜のタクシーに乗ったのは、観光地からホテルに送った後なのかな?













”アラン”という名前と・・・







右頬に”深い傷”だけが唯一の手がかり。












ひとりで動けばクリスを傷つけなくてすむ。









これがあたしが選んだ選択肢。















見つかるかな?










こんな短時間で。













不安と期待が入り混じる。














残された時間の中で精一杯やってみよう。









彼に会えることを心から祈りながら




あたしの気持ちは すでに走り出していた。














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red sign11(TSUKUSHI side)

►2008/02/28 12:33 

『ねぇ、・・・起きてよ』







類はあのまま寝てしまって、





まだ小さな寝息をたてている。









昨夜、抱きしめられた感触がまだ残っていて、




ぎゅっと掴まれた手首にそっと触れると、そこから類の想いが




零れ落ちていくような気がした。






あたしの本心を引き出すために、




自分の本心をぶつけてきた類。






激しく・・・そして・・・せつなく。





類はどんな気持ちだったんだろう。






自分の気持ちを最初からハッキリ見せていたら




傷つけずにすんだのに。







そう思うと胸がイタイ。







それでもあたしは目の前の愛より、手の届かない愛を選んだんだ。






あいつにこの想いが伝わらなくても、それでいい。





認めることであたしの心は解放されたのだから。





もう逃げない。





逃げたりしない。






類の想いを無駄にしないためにも。






















『類、そろそろ起きよーよ。』







何度、呼びかけても、揺すっても ぜーんぜん起きてくれない。







そう言えば、本人から丸2日寝てたって聞いたことがあったよーな?








でも、もう立派な社会人なんだよ?







いつも誰に起こしてもらってるんだろう?
























『はぁ〜』













本日5度目のため息。












・・・どうしよう・・・









この後、クリスとの約束もあるし。








昨夜のうちに荷物をまとめておいていたから、





あとは部屋を出るだけ・・・なんだけど。









でも、このまま置いていくわけにはいかないし。














きっとこうやって寝顔を見ることもなくなるんだろうな。






類だって、有名なJrだもん。





結構のんびりしてるように見えるけど、かなりのやり手だって美作さん言ってたし。







全然うちにも遊びに来なくなったし。







やっぱり、あたしとは かけ離れた人生歩んでるんだよね。







西門さんも、美作さんも、滋さんも、桜子も。







そして・・・あいつも。










そう思うとちょっとだけ寂しくなった。















・・・それにしても・・可愛い寝顔だな・・・










つい触れたくなって・・頬をつんっと押してみる。








・・・うわぁ〜ぷくぷくしてる・・・









まるで赤ちゃんみたいな肌だよ。









それに比べてあたしの肌は・・・










こんな綺麗な顔に好きだって言われたなんて



未だに信じられないよ。









一般庶民のあたしなんかよりも、




世の中には綺麗な人がたくさんいるのにな。









類ってば・・・”視力悪いんじゃないの?”って言いたくなる。



















・・・ホントに綺麗な肌・・・









そして、あたしは吸い込まれるように・・・
















・・・あっ・・・










・・・あた・・し・・・











・・今・・・













・・・なんてことを・・・
















自分で起こした行動に驚いてしまって・・・思わず両手で口元を覆う。








胸の高鳴りだけが上下に響き渡っている。








それはまるで音のはずれたクラッシックみたいに。
















ソファーの下に隠れたあたしは覗き込むように確認する。











・・・よかった、気づいてないみたい・・・











ホッと胸を撫で下ろす。








何やってんのよ、あたしってば!










類の頬に・・・キ・・・








その先は言わないでおこう。









だって・・・









どういうわけか・・・









体が勝手に動いちゃって・・・








そっ、そうよ、これはお礼よ!







いつも助けてもらってるお礼なのよ。








あぁ、なんて苦しい言い訳。








でも、本人は気づいてないし。








これはあたしだけの秘密ってことで・・・。



























結局、あれから類は目を覚ます気配もなく。









クリスとの約束の時間も迫っていたので、メモを残し部屋を出ることにした。











今日、あたしは帰国する。







この短い時間の中で、自分の気持ちに向き合うことができた。






今の気持ちを道明寺に伝える時間はないけれど、これでよかったと思ってる。
















フロントへ向うと、すでにクリスはあたしを待っていた。





オフなのか、カジュアルな格好で 昨日の彼女と同一人物だとは思えないほど



ガラリと印象が変わっていた。








『おはよう、つくし。昨夜は眠れた?』











『あ・・・うん、まぁまぁ・・・かな』












まさか、男の人と同じ部屋に泊まったなんて・・・口が裂けても言えない。













『それじゃ、行きましょうか?荷物はこれだけ?』










『うん』












『じゃあ、これ後で届けさせるわ』










クリスはさっさと荷物をホテルマンに預けると、





嬉しそうにあたしの手を引きながらエントランスを出た。













今日のクリス・・・すごく明るいな。







何かいいことあったみたい。








彼女の横顔が眩しく見えた。












・・・これからどこに向うのかな?・・・







大抵の観光スポットを案内してもらったんだけど、まだ残っていたらしい。











初めて来たハワイ・・・








たった1日半の滞在だったけど・・・







クリスと出会って・・・








みんなと過ごして・・・







あいつへの想いを再認識して・・







今まで何の変化もなかった2年間より、




この36時間は何より濃密な時間だった。












『つくしとも・・・お別れね』
















『そうだね。





・・・せっかく出会えたのに、もうお別れなんだもんね』











そう思うと あたしも寂しくなってきた。






昨日出会ったばかりなのに・・・






昔からずっと友達だったような気がする。





同じ日本で生まれて、そして異国に渡ってきたクリス。








・・・同じニオイがする・・・







そう言った、あの瞳が忘れられない。












『・・・つくし・・・今、幸せ?』











『うん、幸せだよ。ハワイに来て それがよく解ったって感じ』









『そう、それは良かった』









人との繋がりって本当に素晴らしいって思った。





日本にいたら、そんなこと思わなかったかもしれない。








ふと昨夜出会ったドライバーを思い出す。







あの人とも束の間の時間だったけど、素晴しい出会いだった。















『素敵なお友達がたくさんいるんですもの、うらやましい』












『クリスだって大切な友達だよ!』











『そう言ってもらえると嬉しいわ。





日本人の男性はレディファーストじゃないっていう印象だったんだけど、




総二郎とあきらは別格ね』











『えっ!?別格って・・・





なっ、何か変なことされなかった!?』












あの二人・・・






あたしが倒れてることをいいことに、クリスに手を出すなんてっ!














『変なこと?




いいえ、とても紳士的だったわ』











しっ、紳士的?









どう見ても獣にしか見えないんだけど!?










獣・・・







猛獣・・・












あ・・・そうだ。






猛獣で思い出した。






まだ、あたしクリスに話してなかったことが・・・ひとつだけあった。






これも縁だし、クリスには話しておこう。










『実はね・・・クリスには話してなかったけど。






ビーチバレーであたし倒れたでしょ?





あのときに助けてくれた人ね・・・





実は前に付き合ってた・・・』











『道明寺・・・さんでしょ?』










クリスはあたしよりも先にその名を口にした。









『・・・知ってた・・の?』
















・・・あっ・・・








・・・昔・・・クリスが働いてた有名ホテルって・・・













『クリス・・・もしかして・・・』












『そうよ、私メープルホテルで働いてたの』











『じゃあ・・・クリスの好きだった人って・・・もしかして?』











クリスは静かに頷いた。











『ゴメンなさいね・・・隠すつもりはなかったの。




あなたの名前も知ってたわ。




ホテルの従業員で知らない人は いなかったぐらいよ。





だから、あなたがハワイに来るって聞いたときはとても驚いたのよ。




あなたはとっくに彼と幸せになっていると思っていたから。





驚かせるつもりはなかったんだけど・・・あなたのことが知りたくなって。





彼がどういう人を愛していたのかを、この目で確かめたかったの』













『クリス・・・』











『好きだった・・・って言ったけど。






好きというよりは・・・憧れね。






あなたがどんな反応するか楽しみだったんだけど、





全然気がつかないんですもの』












『・・・ごめん。




あたし鈍感みたいで・・・』












『そういうところが あなたの魅力なのかもしれないわね。





明るくて・・・そして優しい・・・。





彼があなたに惹かれた理由すぐに解ったわ』











・・・クリス・・・











『つくしに出会えて本当に神様に感謝しているの。






だからこそ、あなたには幸せになって欲しい』











涙を浮かべ、あたしの手をぎゅっと握った。







あなたが泣くとあたしも・・・











『泣かないで、クリス。






泣きたいときは笑うの。







笑うと元気がでるんだよ』














思いがけなく零れ落ちた言葉。







クリスは驚いたような顔であたしを見ている。











『・・・どうしたの・・・クリス?』










『・・・』









『・・・あたし何か変なこと言った?』












クリスはゆっくり首を振ると深い息を吐いた。











『違うの・・・。





別れた彼に最後に言われた言葉と同じだったから・・・』












『昨日、話してたあの・・・彼?』










身分が違うと別れを強要されたクリス。







彼女の中に眠る 未だに癒えぬ深い傷・・・











『泣いてる私の肩を抱きながら・・・そう言ってくれたのよ。




私が切り出したのに、一度も責めようとしなかった。




彼を傷つけてしまったのに・・・』












・・・今でも愛してるんだね、クリス・・・













『実はね、さっきの言葉は・・・




昨日ホテルまで送ってくれたタクシードライバーの受け売りなんだ。




すごく明るい人でね、カタコトなんだけど日本語も上手・・・』















キキキキィー!!!!!









いきなり急ブレーキをかけたクリス。





あたしは驚きのあまり、心臓が止まるかと思った。






『ど・・・うしたの?クリス』








クリスの表情が、にわかに変化しているのをあたしは見逃さなかった。











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red sign10(TSUKUSHI side)

►2008/02/27 11:30 





フロントで荷物を受け取ると、クリスの姿を捜した。






けれど、どこにもその姿が見当たらなくてガックリと肩を落とす。






半日あたしが振り回しちゃったんだもんね。




きっと仕事が山積みなのかもしれないな。




なんだか悪いことしちゃった。





あたしだって遊びで来たわけじゃないんだけど。




どういうわけか・・・こういう展開になっちゃって。







帰国前に、もう一度話したかった・・・な。
















仕方なく自分の部屋に向かおうとしたその時に、




エントランスの方から あたしの名を呼ぶ声が聞こえた。









振り返るとそこには、大きな荷物を抱えたクリスが立っていて、




あたしは手にしていた荷物をそのままに、彼女のもとへと駆け寄った。







思ったよりも明るい笑顔でホッとする。













『すごい荷物だね』














『あぁ、これ?うふふ。





それより、もう大丈夫なの?』












『うん、おかげさまで。





ごめんね、心配かけちゃって』













『ううん、いいのよ。





ホント、元気になってよかったわ』












『ありがとう。




クリスの方こそ、大丈夫だったの?』











一番それが心配だった。













『そんなこと気にしないで。




今日は本当に楽しい一日だったわ。





いろんな意味でね』
















『いろんな意味?』













・・・なんだろう・・いろんな意味って・・・














『クリス!!』










ホテルの従業員らしき人が遠くから彼女を呼んでいる。







チラッとそちらに目をやると、




「あ〜あ、お呼びが かかっちゃったわ・・・」と残念そうに舌を出した。








このホテルの支配人とは思えないほどのキュートな表情に



思わず”カワイイ”と思ってしまった。














『もう行かなきゃ。




つくし・・・今日はありがとう。




ゆっくり休んでね』












『うん、クリスも』















『あ、そうそう。






まだ紹介してなかったスポットがもうひとつあったの。






明日の朝、是非案内させて欲しいのだけど・・・。






どうかしら?』













『明日は帰るだけだから、大丈夫だよ』











『じゃあ、10時に。ここで待ってるわ』









『うん、わかった』









そう言うとクリスは安心したような表情で、



そのまま従業員のもとへと足早に去って行った。





























熱いシャワーを浴びた後、タオルで濡れた髪を乾かしながら



夜空を眺めていた。




空には無数の星。




暗がりの中で、懸命に光り輝こうとしている。




名も知らぬ星たちにまた祈る。










・・・早く、この切ない想いが消えますように・・・















泣きたいときには笑う。







笑えば元気になる。









あのドライバーがあたしに教えてくれた”小さな魔法”。










本当にそうなのかもしれない。







泣いても何も変わらない。






それなら いっそ笑っていた方がいい。


















コンコン・・・













誰かがあたしの部屋をノックする。







時計の針をみるともうすでに深夜を回っていて、




ドア越しに立つ人物に少しだけ緊張を覚えた。













・・・こんなに時間に誰だろう・・・











・・・もしかしてクリスかな?・・・











でも、それなら部屋にコールが鳴るはず。











不安を抱きつつも、鏡で自分の腫れた目を再確認して、



ドア越しの人物に問いかける。










小さな声で。











『どちらさま・・・デスカ?』












しかも、日本語で。















『俺だけど・・・』












その声に思わず目を丸くして、硬直状態。







どうして、彼がここにいるのだろう?





どうして、ここが分かったのだろう。








しばらくドアの前に立ち尽くしていると、







『早く、入れてくれない?』






・・・と催促の言葉が出た。










『あっ、あぁ・・・うん。ちょっと待って』











ロックを解除し、ドアを開けると 数時間前まで一緒に居た彼がそこにいた。











『どうしたの?こんな時間に・・・』











思いがけない来客に戸惑いを隠せない あたし。













『ちょっと・・・いい?』











『あ・・・うん。散らかってる・・・』










最後までの言葉も聞かずに、ふらっと部屋に入ってきた彼。







数時間前とは、ちょっと様子が違う。







どうしたんだろう。











『よっ、よく ここだって解ったね?』










何故か緊張してしまって、声が裏返ってしまった。











『あの女の子が教えてくれた』












『女の子?



あぁ、クリスね。そっか・・・。




でもいいの?みんなと飲んでたんでしょ?』









・・・本当なら酔いつぶれていても おかしくない時間なのに・・・











『さんぽに行くって言ってきた』










淡々と話す横顔は やっぱりいつもの彼じゃない。










『あ・・・そうなんだ。




・・・ねぇ、何か飲む?





枕がかわると眠れないのよね。 





ちょっとだけ付き合ってくれない?』













その状況を誤魔化すかのように、




ミニバーから冷えたアルコールを取り出した。









・・・あっ・・・すっかり忘れてた・・・








肩にかけたままのタオルに気づき、慌てて取った。






いかにもお風呂上りって感じで、恥ずかしかったから。











『どーぞ』









カタンと小さなテーブルにそれを置くと、彼は何の反応も示さずに




ただ黙って夜空を眺めていた。






あたしはそんな彼を横目にアルコールを口にした。





そうじゃないと この雰囲気に耐えられそうにもなかったから。












しばらくの沈黙。








それを破ったのは彼の方だった。













『どうして本当の気持ち伝えようとしないの?』















窓際に立つ彼が、あたしに問かけた。





真剣な眼差しで、じっとあたしを見つめている。









あまりにもストレートな問いかけだっただけに、




すぐに言葉を返すことができない あたしは





そのまま俯き、パジャマの裾をぎゅっと握り締めた。












そして、少し間を置いてから 口を開いた。






震えそうになる声を必死に抑えながら。











『・・・本当の気持ち?






何よ・・・それ。





言ってる意味解らないよ、類』


















『牧野、俺のこと どう思ってる?』














『どう・・・って・・・。





好きだよ、もちろん。




どうして急にそんなこと聞くの?』









動揺を隠すように、手元のアルコールを ぐいっと飲み干した。










『じゃあ・・・好きなら俺と付き合う?』











『・・・えっ・・・』










突然の言葉に俯きがちだったあたしの視線が上がる。











『好きなら俺と一緒に暮らせる?』










『な、な、な・・・何言い出すのよ、いきなり。





いくらフリーだからって、からかわないで!』













『俺は本気だけど?』












そんな瞳で見つめられたら・・・






どうしたらいいのか解らない。













『類、美作さんたちに飲まされ過ぎたんじゃない?





もう、これだから酔っ払いは・・・』
















『いつまでもそうやって逃げるつもり?』












『逃げる・・・って・・・。






あたしそんなつもりじゃ・・・』













『俺はいつもおまえの傍に居てやりたいと思うし、守ってやりたい。




これがオレの本心』












『る・・・い』











『好きだよ・・・牧野。





あの頃からずっと好きだった』













えっ・・・







今・・・何て・・・









類は呆然と立ち尽くすあたしを抱きしめると、




もう一度「好きだ・・・」と耳元で呟いた。









その囁きに心が びくんと跳ねる。









そして流されるようにベッドに押し倒された。






何が起こったのか一瞬解らずに、柔らかなベッドの下から



類の顔を見上げていた。









気づいたときにはしっかり両手をつかまれ、もう抵抗することができなかった。





そして・・・このとき初めて類が”ひとりの男だ”ということを




思い知らされた。










ずっと友達と思っていた彼が・・・




こんなに激しい面を持っていたなんて。











柔らかな髪があたしの頬を撫でる。








ふわりと伝わる甘い香りが あたしを包んで離さない。









類のことは嫌いじゃない。








いつも温かく見守ってくれている。









でも、このまま流されていいの?







自分の気持ち偽って・・・







類を利用してしまっても?







あたしの気持ちは今どこにあるの?







あたしの気持ちは・・・







あたしが一番求めてるのは・・・







あたしが本当に愛しているのは・・・













『・・・どう・・みょう・・じ』










・・・気づいたらそう呟いていた。







涙があたしから零れ落ちていく。








類は睫毛を伏せたまま、ゆっくりと離れていった。








そして小さなため息を吐くと、








『こうでもしないと・・・いつになっても白状しないよな?




もう泣くな。





最初から素直になってれば こんなに目を腫らすことはなかっただろ?』












類はくすっと笑って、あたしの瞼にキスを落とした。










『・・・い』













『もう無理するなよ、おまえらしくない。





確かに司は道明寺財閥の後継者だけど、まだガキみたいなところあるし・・・





あんな猛獣、牧野にしか扱えないよ?』












『・・・でも・・あいつには』












『そんなに気になるなら、本人に会って確かめればいいんじゃない?』










そう言いながらソファーに腰をおろし、大きなあくびをする類。










『確かめるって・・・いったって・・・





あたし自信なくて・・・





さっきだって逃げ出して来ちゃったし。





婚約おめでとうって言ってきちゃったし・・・






何を話せば・・・』
















『・・・・・・』













『・・・ねぇ・・・類、聞いてる?』














『・・・・・・・・・・・ZZZZZZZzzzzzzzzzz』














『ちょっ、ちょっと!





類!?






ダメよ、ここで寝ちゃ!





起きなさいよ!類ってば!!!







る〜いぃぃぃぃぃ!!!!!』





























どうしてあんなことした後に、あくびひとつで眠れちゃうわけ?







まったく・・・子供みたいだよ。









そっとブランケットをかけ、




いつまでも無邪気なその寝顔を見つめていた。












類はいつもあたしに気づかせてくれる。









本当の気持ちを。














迷ったときも。







苦しんでるときも。






ずっと・・・ずっと・・・






そばにいてくれた。








かけがえのない大切な人。









これからもその気持ちは変わらない。









この想いは一生ものだよ。














ねぇ、類?







あいつは待っていてくれるかな?





もし想いが通じなくても、昔みたいに笑いあえるかな?







もう・・・あたし泣かないよ。






これからは、何があっても笑っていたいから。






この先何が起ころうとも・・あたしなりに。







あたしらしく生きていきたいから。










だから、類・・・そこから見ていてね。








あたし強くなるから。








あの頃のあたしに戻るから。







もう一度頑張ってみるから。









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red sign9(TSUKUSHI side)

►2008/02/26 11:09 





俯き歩いていた あたしの足はすっかり棒になっていた。







どうやって帰ったらいいのか?






どこにクリスのホテルがあるのか?








ハワイ初心者のあたしにとって それすら解らなかった。










ただひたすら、遠くに見える街の灯りを目指して歩くしかなかった。









心細い気持ちを抱えながら歩く あたしの目の前を 1台のタクシーが通り過ぎていく。





それもガタンガタンという、今にも壊れそうな音をたてながら。






するとそのタクシーはゆっくりとバックし、ピタッと横付けしてきた。







思わず何事かと、足が止まる。







ドライバーは”どうぞ”と言わんばかりに、後部座席のドアをガチャっと開けた。






確かにもう歩くのは限界に達している。





日本だったら間違いなく乗っているだろう。





たかが タクシーと言っても、ここは異国の地。





ちょっとそこまで・・・というわけにはいかないのだ。









あたしに残された選択肢は”天国”と”地獄”。







何事もなく、ホテルに送り届けてもらえば”天国”







明日、あたしの顔が新聞一面に載るようなことがあったら”地獄”









いろんな思いが頭を交差し、天国を選ぶか それとも地獄を選ぶか




あたしのたった一言・・・”YES”、”NO”にかかっていた。


























『HOTEL CONSTELLATION』









ハンドルを握る彼にそう告げると、タクシーは暗闇の中走り出した。





あたしは前者を選んだ。




もう、こうなったら ”どーでもいいや”って。




半分、ヤケに近い感じで。
















・・・HOTEL CONSTELLATION・・・









クリスが待つホテル。








日本語で”星座”と言う意味・・・らしい。








あの浜辺で見た星は、日本で見るより とても近くに感じた。







手を伸ばすと今にも届きそうな・・・






触れると消えてしまいそうな・・・






美しい星たちだった。














しばらくの間、あたしの ”ほっといて”オーラが効いていたのか、



ドライバーは一切話しかけてこなかった。







車中の雰囲気もフツーで、ホッとした。





ただシートが揺れるたびに、変な音がすることを除いては。









車の窓から見える夜景が潤んで見える。






泣いても泣いても涙は一向に枯れそうにもない。





こんなに泣いたのは久しぶりだ。










・・・あたし・・こんなに弱かったのかな?・・・










ハワイに来てからずっと泣いてばかりいる。











・・・道明寺が言おうとしてた言葉、ちゃんと聞いておけばよかったかな?・・・











・・・そしたら・・・自分自身にちゃんと区切りが打てたのに・・・










今更後悔しても遅いのに。







だって、逃げ出したのは あたしの方なのだから。






















・・・今頃、みんな楽しく飲んでるんだろうな・・・








傍にいてくれた仲間たちを思い出す。











せっかく背中を押してもらったのに・・・うまくいかなかったよ。











・・・ゴメンね、みんな・・・

























『アノ・・・スミマセン』















・・・えっ、日本・・・語?・・・














いきなり日本語で話しかけてきたドライバー。






どう見ても現地の人・・・だよね?













・・・どっ、どうしよう・・・







・・・ちゃんと答えた方がいいの・・・かな・・・?















『・・・ハ・・イ。・・・ナンデショウ・・・カ?』













相手の様子を伺いながら、返事を返すあたしの心臓は少しだけ早い。













『アナタ・・・ニッポンジン ・・・デスカ?』












・・・へっ?・・・


















『ハイ。ソウデス・・ケド?』











まるで日本語学校の会話みたい。







まさか・・・これ・・・新手の何か?







やっぱり・・・乗るべきじゃなかった?
















『ナキタイトキハ・・・ ワライマス』














・・・えっ?・・・














・・・ナキタイ・・・トキハ・・・ワラウ?・・・











『アナタ・・・カナシイ・・・ナイテマス。




 ナキタイトキ・・・ワラエバ・・・ゲンキ・・・デマス』











ルームミラー越しにドライバーの顔をチラリと見た。






あまりよく見えないけれど・・・若いみたい。










・・・もしかして、慰めてくれてるのかな?・・・










思いがけない優しさに、涙を拭いながら笑って返す。














『日本語上手ですね』













『ジョー・・・ズ?』











『プッ・・・。それは映画だよ。








あぁ・・・えっと・・・Japanese is good!・・・で、いいのかな?』












『Thank you!』










よほど嬉しかったのか、ドライバーはフォンフォンとクラクションを数回鳴らした。










すごく陽気な人だな。











『どこで覚えたんですか?日本語』











『・・・?』











『Where did you study Japanese?・・・で、いいのかな?』











『オオ。トモダチ二・・・オシエテ・・・モライ・・・マシタ』










『友達?・・・トモダチハ ニホンジン デスカ?』










今度はゆっくりと問いかける。












『ハイ、ソウデス。




トテモ・・・ヤサシイ・・・オンナ・・・デシタ』











『オンナ・・・デシタ?』










・・・なんで、過去形?・・・









あたしは何とも言えぬカタコトに思わず噴き出してしまった。











『・・・ヘン・・・デスカ?』











ドライバーはあたしの笑っている意味が解らないみたいで、首を傾げている。













『イイエ、ヘンジャナイデス・・・』













あたしまでカタコトになっちゃった。







なんか笑っちゃう。












そっか・・・






やっぱり、あたしのこと気にしてくれてたんだ・・・この人。












ナキタイトキハ・・・ワラウ・・・







泣きたいときは笑う・・・かぁ・・・






不思議な人だな・・・この人。







どうやら、あたしが思ってるような人じゃなかったみたい。


















『ドコカラ・・・キマシタカ?』











『東京です。知ってるでしょ?』









『オォ・・・シッテル。トウキョウ・・・アカルイネ』










『来たことあるの?』










『ナイ』











アハハ・・・






そんなにあっさり断言しなくても。













『デモ・・・シッテル』











自信満々に話すドライバーに思わず苦笑してしまう。









『東京は明るいけど、こんなに綺麗な星空・・・見られないんだよ?






本当にここは素敵なところだよね・・・』













あたしがペラペラと話すものだから、




ドライバーは またまた首を傾げてしまった。












それからしばらく、日本語講座のような会話を楽しんでいたあたしたち。








・・・もうちょっと英語を話せたら、もっと楽しい話を聞くことができたのにな・・・










改めて自分の語学力の無さに溜息。




















街灯のあかりが、ぼんやりとタクシーの中を照らし出す。




その時、あたしの目に飛び込んできたのは、ドライバーの頬の傷。




よく見ると とても深そうな傷で、簡単に傷つけたものではないと思う。。










・・・どうしたんだろう・・・








・・・誰かに傷つけられたのかな?・・・










でも、それ以上見てはいけない気がして・・・窓の外に視線をそらしてしまった。








明るくて陽気なこの人に、どんな過去があったのだろうか?







見える傷と、見えない心の傷。








人は誰にも過去がある。








それを財産に生きていく人と、いつまでも引きずる人。








あたしはきっと後者だと思う。







ずっと過去に縛られ生きてきた。







今は無理でも、いつかは前者になれるかな?








”そんなこともあったね”と笑える未来が欲しいよ。


















少しだけガタゴトと揺れる道を走って行くと、ようやくホテルの灯りが見えてきた。







美しくライトアップしたエントランス。







あたしの小旅行も終わりを告げる。










ポケットから財布を取り出し、お金を渡そうとすると 何故か彼は首を振った。











『あっ、足りなかったのかな?えぇっと・・・』










財布をガサゴソしていると、それに気づいた彼は










『イリマセン・・・ニホンゴ・・・オシエテモライマシタ』







・・・とニッコリと笑った。













『あ、でも・・・』















『ナキタイトキハ ワライマショウ、オジョウサン』











そう言い残して、オンボロタクシーはあたしの前から去っていった。














泣きたいときは・・・笑いましょう。





笑えば元気が出る。






今のあたしに一番ふさわしい言葉だと思った。






束の間の出会いだったけど、いろいろ教えてもらったような気がする。




言葉はうまく通じなくても、心に響く何かをもらった。




すぐには気持ちを切り替えられないけれど、



いつかまたあのタクシーに乗るチャンスがあるのなら



心から笑って再会したい。








”いろいろあったけど、今はとても幸せだよ”って




いつか言える日が来ると・・・イイナ。











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red sign8(TSUKUSHI side)

►2008/02/25 11:12 

夕焼けが星空に変わる頃。






潮風になびく髪を、指先でそっと押さえながら




人影もない浜辺を歩いていた。
















・・・どこに行っちゃったんだろう?・・・










美作さんたちはビーチにいるって教えてくれたけど・・・全然見つからない。










・・・あぁ、何やってるんだろう。あたしは・・・








歩き慣れていない砂浜を歩いていたせいか、さすがに疲れて、





その場に座り込んでしまった。








そして小さなため息を吐くと、そのまま膝を抱え 静かに目を閉じた。












あいつと別れてから・・・忘れよう、忘れるんだと




何度言い聞かせたことだろう。








忘れようと決意した朝は必ずと言っていいほど




テレビのニュースや、手に取った雑誌に現れる。








その度に あたしの小さな決心はことごとく撃沈した。






やっと気持ちを封印できたのは、日々の積み重ねがあってのこと。




もちろん仲間たちの支えもあったけど・・・




考える隙も与えないぐらい、仕事に打ち込んだ。




今、思えば以外に簡単なものだった。






だから・・・





いつ、どこで逢っても もう大丈夫・・・だと、高をくくっていた。








けれど、いざ再会してみると・・・




あっけないほど 万里の長城のようなあたしの心の壁は




一瞬にして崩れ落ちてしまった。















・・・もう帰ろうかな・・・










こんなにも捜しているのに、見つけることができないなんて・・・








そっか・・・








きっと これも運命なんだよね?






あいつと繋がる糸など、最初からなかったんだ。






ひょっとしたら・・・なんて淡い期待を抱いてしまった自分が情けない。




そう、もう終わってるんだ。




あいつに信じてもらえなかったあの日に・・・全て終わったんだ。










・・・少し肌寒くなってきたな・・・









衣服についた砂を掃うと、再び歩いてきた道を戻る。





さっきよりも足取りは重い。








明日の今頃は日本に到着しているだろう。






そして、またいつもの生活に戻る。







今日再会したのも夢だ。









・・・そう、夢なんだ・・・











そう思えば少しは楽になる。






だから早く現実に戻ろう。








その方がいい。











そして、もう帰ろう。







いつもの世界に。







自分の世界に。




























『・・・きの?・・・牧野か?』













暗闇の中から聞こえてきたその声に思わず立ち止まる。










星の光に照らされて、暗闇の中 微かに見えるシルエット。










その声の持ち主をあたしには知っている。







久しぶりに聞いたあたしの名を呼ぶ声・・・







ずっと聞きたかった声・・・












足が砂浜に吸い付いたように動けない。












『・・・道明寺』










『こんなところで何やってんだ?』











穏やかな声が胸に響く。







あの頃よりも、声が低くなったんだね。







ビーチバレーのときは緊張してて気づきもしなかったよ。











『・・・さ、さんぽ・・・散歩だよ』









・・・何、言ってるんだろう・・あたしは・・・












『そ・・・っか。





・・・それより、もう大丈夫なのか?』










大きな身体を屈めて、覗き込んできた道明寺から伝わる・・・甘いコロン。





この香りがあたしを麻痺させる。





それは昔も今も変わらない。















『あ・・・うん・・・平気。





///・・・・・・・・・・がとね///』















『ん?』








お礼を言うのがなぜか恥ずかしくて・・・




小声になってしまったあたしの声はやっぱり届いていなかった。









そして、もう一度・・・







『さっきは助けてくれてありがとね・・・って言ったのっ!』












『お・・・おう』









なんて可愛げのない言い方。






どうしてもっと優しく言えないんだろう。





これじゃ昔と何も変わらないじゃない。









でも・・・道明寺も少し変だ。





声が裏返ってるし。





調子悪いのかな?






少し痩せたみたいだし。













・・・気まずい沈黙・・・










ちゃんと話したいのに、改まって向き合ってしまうと




何から話したらいいのか解らない。







みんなにもらった勇気も・・・




お礼を言ったときに使い果たしちゃったみたいだ。








さっきから道明寺は黙ったまま、暗い海を見つめている。








一緒に居てもつまらないのかな?





あたしと話すのもイヤなのかな?






そう思えば思うほど、ネガティブな気持ちになってしまう。








ひとりで道明寺も過ごしたかったんだよね?





毎日過密スケジュールに追われてるんだもん、一息吐きたいよね?







あたしはここにいるべきではないんだよ、きっと。










お礼も言えたし・・・







もう、・・・これでいい。













『じゃあ、あたしホテルに戻るから・・・』












『そ・・・か・・・』











止めないんだね?









そうだよね。








それは当然なこと。













もしかして・・・?って・・・






心のどこかで 少しだけ期待している自分がまた顔を出す。











・・・バカだな・・・ホントに・・・









涙が・・・出そうに・・・なる。
















『何で泣いてる?』















『・・・てない』













『嘘吐くな・・・』












長い指先があたしの頬に伸びてきた。





思わず目を閉じる。




けれど・・・いくら待っても その指先は あたしに届くことはなかった。













ズキン・・・





これは胸の痛みの音。













触れるのも・・・嫌なんだね。






そうだよね、あんたには結婚すべき人がいるんだもんね?





その人を裏切ることなんてできない。





あぁ、そっか。





今、ここで気持ちを伝えたとしても・・・何も始まらないんだ。






そして泣く権利なんて 最初からないんだ、あたしには。












『どうした?』










『う、ううん。




西門さんのボールかなり強烈だったから、



頭打ったとき涙腺もおかしくなっちゃったみたい』








必死に・・・あたしなりの”涙の言い訳”をする。










『それより・・・よくお休みが取れたね。



いつも忙しいみたいだし』












『あぁ・・・。 ・・・類が』










『類?



類が・・・どうしたの?』










『あ、・・・いや・・・別に』














『・・・そう』










会話が全然つながらない。





ギクシャクするばかりだよ。













『・・・ごめんな、牧野』







道明寺は砂浜に腰を下ろしながら そう呟いた。










『あたしこそ・・・いろいろと・・・ごめん』









大きなその背中を見下ろしながら、くちびるを噛みしめた。









謝られるとつらい。






まるで過去を清算してるようで。






曖昧だったあたしたちの関係も、クリアになっていく。







そして今日限りで、あたしたちの関係も終わるのだろう。














『牧野、俺・・・』











・・・言わないで、その先は・・・









『道明寺、・・・婚約決まったんだってね?







テレビで観たよ。おめでとう。





よかったね、あんたのこと解ってくれる人がいて』










『牧野?何言って・・・』











『それじゃ・・・あたし行くから。




みんなによろしく伝えて・・・』













最後の言葉まで伝えられただろうか・・・








あたしはあいつの決定的な言葉を聞くのが怖くて、



気づいたらそこから逃げ出していた。









・・・どうして こうなっちゃったんだろう・・・










掛け違えたボタンを直すのが こんなにも難しいなんて・・・









再会しなければこんな苦しい想いをしないで済んだのに・・・








閉じ込めた想いに気づくこともなかったのに・・・










飛び越えてはいけないボーダーライン。






あたしには飛び越える勇気さえ、持ち合わせていない。







もし超えたとしたら、あいつは受け止めてくれただろうか・・・?









ううん・・・









それはありえない・・・












・・・あの頃は好きだったけど・・・今は・・・










そう言われるのが怖かった。








怖かったんだ。










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►2008/02/24 14:03 

目を覚ますと・・・






そこに見えたのは青い空ではなく、真っ白な天井だった。









・・・ここは・・・どこだろう?・・・










いつのまにか、ふかふかのベッドの上で寝ていたあたし。










居場所を確認するために 身体を起こそうとした次の瞬間、



ズキンという鈍い痛みに襲われた。













・・・あ、いたたた・・・










こめかみを押さえながら、あえなくベッドに逆戻り。







どうやら、起き上がるのは無理みたい。









白を基調とした広い部屋には、美術館や博物館に置いてありそうなものが



ちょっとしたアクセントのように さりげなく飾られていて 



誰がどう見てもフツーの部屋ではないと思った。









部屋はすっかりオレンジ色に覆われ、夕暮れ時になっていた。





レースのカーテンがユラユラと風になびいて、




その向こうから静かな波の音が聞こえてきた。











・・・あぁ、そっか。ここは日本じゃないんだ・・・














今 置かれた状況を曖昧な記憶の中、ゆっくりと整理してみる。









確かあたしは・・・





クレーム処理のためにハワイに来ていて・・・






そこで出会ったホテルの支配人のクリスと食事をして・・・







ビーチで砂の城をつくって・・・










それから・・・









えーっと・・・

























ガチャ・・・














そのとき、静かにドアが開いた。













『あっ、先輩、気がつきました?




気分はどうですか?』








心配した顔であたしの傍に駆け寄ってきた桜子。







その顔を見てやっと自分が さっきまで何をやっていたのかを思い出した。





それが、どうして・・・ベッドの上なんだろう?










『あぁ、うん・・・平気みたい。




ねぇ、桜子。どうして あたしがここで寝てるわけ?』













そう。





それがあたしにとって今、最大の謎。














『えぇ?覚えてないんですか?






まぁ、無理もないですよね』










桜子は苦笑しながらベッドに腰を下ろし、続けた。









『みんなでビーチバレーしてて、先輩が西門さんのボールを



まともに受けちゃったんですよ』











・・・そうだったんだ。どーりで、おでこあたりに違和感があったんだ・・・











『さっきお医者様に診ていただいたら、軽い脳震盪だって言ってましたよ。






ここに来てまで心配させないでくださいよね、もう若くないんだから』















『ハイハイ、気をつけます。・・・・じゃないつーの!


桜子、若くないって言ったってあんたとほとんど変わらないんだよ?



いつになったら その・・・』










『よかった』










あたしの言葉を遮るように桜子がニッコリと笑った。




ヒートアップしていたあたしはその表情に肩透かしを食らわされた気分になった。











『その元気があれば、もう大丈夫ですね?』













あぁ、そっか・・・








桜子・・・わざと・・・








本当に心配してくれたんだ・・・


















『ここ、クリスのホテルでしょ?




すごい部屋だよね、ビックリしちゃった。




あたしこんなVIPルームに泊まれないよ。




いくら出張でも、経費で落とせるわけないし・・・




部屋替えてもらわないと・・・』
















『えっ、何言ってるんですか?




ここは道明寺さんのハワイの別荘ですけど?』














『あぁ、そうなんだ。



道明寺のね・・・どっ、道明寺のっ!?』












『だって、あのビーチから一番近いところはここしかなかったんですよ?






あ〜先輩、もしかして道明寺さんのこと意識しちゃってるんですかぁ?』











『ばっ、バカなこと言わないでよ!





とっくにあいつとは終わってるんだから!』











ゼーゼー、ハァハァしながら必死に否定する。











『ふふふ。先輩、ムキになりすぎですよ♪




そうですよねぇ〜もう終ってるんですよねぇ〜。




またアタックしちゃおうかなぁ〜道明寺さんに♪』













『ど、どうぞ。好きにしたら?』














『な〜んて、冗談ですよ。




先輩、今の自分の顔 鏡で見たほーが いいんじゃないですか?』











『///うっ・・・///』











『じゃあ、私みなさん呼んできますね』












もう、桜子ってば!




完全にからかわれてるな・・・あたし。













あ・・・このシーン・・・










前にもあったような・・・
















そんなデジャヴを感じながら部屋を出て行こうとする



その背中を見つめていた。






するとドアの前で、桜子が何かを思い出したように立ち止まった。










『道明寺さんが・・・』











・・・?・・・











『道明寺さんが助けたんですよ。





花沢さんを制止して・・・





すごく・・・素敵でした』












桜子はそう言い残し、部屋を出て行った。















・・・道明寺が・・・










・・・あたしを・・・?・・・











・・・信じられない・・・










・・・どうして?・・・









・・・あたしたち、もう付き合ってないんだよ?・・・










・・・助けられる理由なんて・・どこにもないのに・・・































『つくしぃ!




よかったぁ〜。ホント心配したんだからねぇ』











滋さんがうるうると目を潤ませ、ぎゅうっと抱きついてきた。







息もできないぐらい、容赦なく。










『しっ、しげるさん・・・くっ、くるじい』











『滋さん、先輩死んじゃいますよ?




子供じゃないんだから、いい加減離れてください』










タコのようにくっついて離れない滋さんを



桜子がどうにか引き離してくれた。












『よぉ、牧野。



もう大丈夫なのか?さっきは悪かったな』








西門さんが申し訳なさそうに部屋に入ってきた。







その後ろに、美作さん・・・そして類。











『ううん、こっちこそ、ゴメンね。




みんなに心配かけちゃったみたいで』













『しかし、相変わらずの雑草パワーだよな?



おまえが男に見えたよ』









『ちょっと、美作さん!失礼なこと言わないでよねっ。



あたしは女ですっ!』









頬をふくらませているあたしを見て、さっきまで黙っていた彼がくすっと笑った。







『牧野、無事でよかったね』












『・・・類』










いつものように穏やかで、薄茶のビー玉。




かつて恋心を抱いた瞳。








そうだ・・・







類も助けようとしてくれたんだよね?










・・・ありがとう・・・類。









いつも こんなあたしを助けてくれて・・・
















『美作さん、クリスは?』











『あぁ、あの娘ならさっきホテルに帰ったぜ。



おまえのことかなり心配してたぞ?』












『そう』













仕事中だったのに、あたしのせいで1日中 振り回しちゃった。




食事どころか、砂遊び、おまけにビーチバレーまで。






大丈夫だったかな?






あまり従業員の人たちともうまくいっていないって言ってたし。







早く帰って謝らないと。















『じゃあ、そろそろホテルに戻るね。





クリスも心配してるだろうし・・・』













『えぇ、帰っちゃダメ!一緒に泊まろうよぉ〜』










身なりを整えるあたしの腕をぐいっと引っ張る滋さん。
















『そうだよ、今夜はここに泊まっていけよ。




これからみんなで飲むんだ。





おまえも一緒に・・・』














『ごめん、西門さん。





荷物、ホテルに置いたままなの。





重要な書類とかいろいろあるし・・・





じゃあ、また日本で』
















だって、ここは・・・。








あたしが居てはいけない場所だもん。









一刻も早く、ここから・・・












あいつがいないうちに・・・


















『礼も言わずに帰っちまうのか?』












西門・・・さん?














『司ならビーチにいるぜ』











美作さんが窓の外を指さしながらニヤリと笑う。












『先輩、お礼言ってこないとダメですよ』













『そうだよ。






いくら別れたからって言っても・・・お礼は別だと思うよ?






これ履いてって。その足じゃ無理でしょ?』











素足のままのあたしに滋さんがそれを差し出す。











『早く行って来い』











西門さんがあたしの肩をポンとたたく。

















『行っておいで、牧野』














窓辺に立っていた類が優しく微笑んだ。















そうなんだ。









後にも、先にも今しかないんだ。







このチャンスを逃したら、二度と逢えなくなる。









今、逢わなきゃダメなんだ。







今、逢わないと本当の意味で前に進めなくなってしまうんだ。














・・・道明寺・・・












あたしは突き動かされるように、勢いよく部屋を飛び出した。





みんなが分け与えてくれた小さな勇気と・・・




眠っていたあいつへの想いが・・・





あたしの足を前へ前へと押し出していた。



















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►2008/02/23 09:02 

『おせーよ!』










美作さんが嬉しそうに、あたしの頭をポンポンとたたく。






これじゃ、まるで子供扱いだ。









『あたしも来ちゃった♪』







陽気にあたしの腕に絡みつく滋さん。










『先輩、ちゃんと日焼け止め塗ってますか?



今は大丈夫でも数年後にシミが出てきますよ』







よけーなお世話よ、桜子。










イタっ!






何も履いていない素足で来てしまったことを今更、後悔。




ついでに言えば、泣いた後だから顔はボロボロ。




さっきも ここに来る間に「顔が変だよ」って言われたばかり。




あのね、「顔が変」って言うのは・・・どうかと思うわよ?




せめて、「目が腫れちゃってるね?」とか、他に言い方があるんじゃないの、類?















その時、キュッと砂を踏む音が 数メートル先から聞こえた。





きっとそれは聞こえるか、聞こえないか・・・微かな音。






その音の発信源が誰なのか、確認しなくてもあたしには解る。







でも、視線を向けることはできない。








視線を合わせたら間違いなく撃沈すると思うから。







意識しないように何度も暗示をかけて、ここまで歩いて来たんだもん。






今更、この気持ちを覆されては困る。






2年という長く苦しかった日々を無駄にしたくない。













けれど。










すぐにあたしの固い意志は、いとも簡単に崩れてしまう。











だって・・・

















突然あいつの方から・・・














『よぉ・・・』
















声をかけてきたのだから。













あたしもつられて・・・












『よぉ』













あんなに距離をとっていた視線が、たった一言で絡み合ってしまう。










あぁ、なんて単純なんだろ。














サングラスをかけているその奥には、かつてあたしが映っていた瞳。








全然変わってない。









声も。









髪も。










しなやかな手足も。









2年前と何ひとつ。










変わったのは・・・









ふたりの・・・











心だけ・・・











だよね?




















周りの視線が、あたしたちに向けられているに気づいたのは・・・数十秒後。







2年ぶりの対面に、どんな反応を示すのか気になっていたみたいだけど。






意外とあっさりしてて、気が抜けたみたい。








ゴメンね、期待させちゃって。








でも、もう終わってるんだよ?








それ以外・・・何もないんだよ?

















平然を装いながら、滋さんと話してはいるものの。








自然にあいつを追ってしまう。








これは夢じゃないかって思えてしまって。







気づかれないように、自分の左手の甲をギュッと抓ってみる。









・・・つう!・・・














イタイ。











やっぱり、夢じゃないんだ。










こんなところで再会するなんて思わなかったし・・・








ましてや心の準備すら・・・できてなかった。









とにかく今は意識しないように。










距離を置くしか・・・ないな。





















そんな時、クリスがあたしの視覚にすぅっと入ってきた。




自分のことばかり考えてたあたしは、一番肝心な人を忘れていた。





あたし以外、知り合いは誰一人いなのに・・・きっと心細かったよね?






ゴメンね、クリス。











『ク・・・』










彼女の名前を言いかけて、あたしの足がピタッと止まる。










クリスは一点を見つめている。










ゆっくりとその視線の先を追ってみると・・・












えっ・・・?













もしかして・・・
































『あっ、つくし・・・』







あたしの存在に気づいて、少し驚いた表情をしていたけれど




すぐに笑顔のクリスに戻っていた。














『ねぇ、さっきあなたが話していた大切なお友達って、



彼たちなんでしょう?



こんなところで会うなんて、すごい偶然ね』










『えっ、・・・あ・・・うん』












偶然じゃないよ。









類が連れてきたというか・・・














『今日は本当にラッキーだわ。



ビーチバレーするの初めてなんだけど・・・大丈夫かしら』











楽しそうに笑っているけれど・・・









でも・・・










何か変だ。










ずっとあいつのこと見てたのは、気のせいじゃない。









あの眼差しは何だったんだろう・・・









もしかして知ってるのかな?、あいつのこと。









そっか、そうだよね。









世界中であいつを知らない人なんて・・・いないもんね。









今、まさに”時の人”だし。






















『じゃあ、始めようぜ!3×3ね。 




俺と総二郎と・・・えっと君は・・・』












『クリスよ』












『じゃあ、クリス。君はこっちのチームね』














なんだか美作さん嬉しそうなんですけど?






いやらしいぐらいに顔がニヤけてますよ?







西門さんと同じぐらいにね。







もう、年上やめたんですか?










まぁ、そりゃそうよね。




クリスは比べようもないぐらいの美人だし。






もし、この世の中にあたしとクリスしかいないとしたら、



世の中の男たちは100%クリスを選ぶはず。





もしもあたしが男だったら、迷わずクリスだもん。














『で、そっちは類と牧野と・・・司ね』
















よぉし、頑張っちゃいますかっ!









やるなら絶対負けないわよっ!










って・・・その前に。












ちょっと・・・。












ちょっと待って?













頑張っちゃう前に。












美作さん・・・何て言ったの?

















『何、きょどってんだ?



牧野は向こうだぞ?』
















それって・・・













もしかして・・・













あたしとあいつが一緒のチームでプレーするってこと???











美作さん・・・!










あたしの立場わかってるよね?










どうして、あいつとあたしが・・・











地雷を踏ませるつもり!?・・・

















『ちょ、ちょっと待って・・・』












と言いかけたあたしに、














『牧野、頑張ろうね』













類があたしの背中を優しく押す。
















『あ・・うん』














それ以上何も言えなくて・・・









流されるまま・・・コートに立ってしまった。













そうよ、これは遊び、遊びよ。







たまたま現地で意気投合した日本人たちと楽しく遊んでるのよ。

(←なんか無理やりだけど)







自分自身にそう言い聞かせながら、




今はボールだけに集中しようといていた。


















太陽が燦燦と降り注ぐビーチで始まった季節はずれの3×3。







自然に流れる汗を拭いながら必死でボールを追う。






体が勝手に動くのは雑草パワーの本能だと思う。






滋さんと桜子の黄色い声援が誰もいないビーチに響き渡る。







砂が時々足元を邪魔するけれど、それが何とも言えない感触で。








ふと、あの島でのビーチバレーを思い出す。











・・・あの時、あたしは・・・類が好きだった・・・













『司!』










類が滑り込みのレシーブでボールをつなぐ。














・・・そして・・・あたしは・・・あいつを・・・・
















『牧野いくぜ!』















道明寺があたしが打ちやすいように高いトスを上げる。














『まかせて!』












力をこめてボールを打ち抜くと・・・









そのボールは ひゅるるるる・・・と美作さんと西門さんの間を擦り抜けていく。














『やったぁ!!!』











あたしは満面の笑みでガッツポーズ!













『つくしぃ〜サイコー!!!』











滋さんと桜子が手を取り合ってうさぎのように飛び跳ねる。













嬉しさのあまり・・・













類に・・・












気づいたら あいつにもハイタッチしてて・・・









我に返ったあたしは思わず その手を引っ込めてしまった。











興奮しすぎだっつーの!!








何やってんの!バカ!!








自分自身に喝を入れる。
















『相変わらず・・・すげぇパワーだな』













あいつがあたしを見下ろし、くすっと笑う。








不覚にもその表情に思わずドキッとしてしまった。










『そっ、それって褒めてるの?』









やっぱり、うまく視線を合わせることができない。








ぎこちないよね?・・・あたしってば。

















でも、どうして?











あんなことがあったのに。




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