sun and moon

since’06.11/25 。HP復活しちゃいました。こちらはtext blogです^^
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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【はち】完結

►2008/01/31 09:15 









その話を聞いた翌日・・・


彼女はブラウン管の向こうにいた。



多くのマスコミを相手に 行き過ぎた質問にも臆することなく、

ひとつひとつ言葉を選びながら慎重に答えていた。



その表情は決して暗くはなく、どこか ふっきれたような明るいものだった。



冷めたコーヒーを口にしながら その会見を観ていた。

















今日は休日。






予定・・・なし。









朝からずっとパジャマのままでのんびり過ごしている。









道明寺からの連絡。




全く・・・なし。










・・・ほとぼりが冷めるまで放っておこうかな?・・・







・・・でも・・・やっぱり寂しい・・・









・・・ かけるべきか・・・かけざるべきか・・・











またケイタイを握りしめて・・・



しばらく自問自答。











・・・もう一度だけ・・・











ボタンを押そうとしたその瞬間・・・













ピンポ〜ン・・・













・・・ビクッ・・・











突然のインターフォン。
















『ど、どちら様ですか?』











ドアの前で頼りない声を出してしまうあたし。











『どちら様じゃねーよ』













・・・!!!・・・









その声に胸が高鳴った。


















『早く開けろよ』











少しイラついたようにドアを叩く。











『あ、えっと・・・


ど、どちら様ともわからない方を お入れすることはできません』













・・・あたし何言ってるんだろ・・・








突然やって来た訪問者に動揺していた。










『いいから開けろ!』






苛立った声がドア越しから聞こえた。


その顔が目に浮かぶ。








あたしはドアを見つめ・・・



そしてゆっくり・・・



手を伸ばす・・・











ガチャ・・・













『・・・道明寺』















『何・・・泣いてんだ?』












・・・えっ?・・・











その時ようやく気がついた。




自分が泣いてるということに。









・・・どうしちゃったんだろ・・あたし・・・






・・・いつのまにか・・涙腺弱くなってる・・・


























『つーか・・・


なんでまだ そんな格好してんだ?もう昼だぞ』













『えっ?』











・・・キャァァァ!!!・・・










思わず自分の身体を抱きしめた。









本日のパジャマ。







セクシー系のナイトウエア。







去年の誕生日に桜子からもらったやつ。







かなりのミニで、決して他人には見せられない代物。











・・・道明寺が来るって知ってたら こんな格好なんて・・・






・・・と、とりあえず、着替えが先だわ!・・・









道明寺はそんなあたしをジィーっと見下ろしている。











・・・嫌な・・予感・・・











『そ、そんなジロジロ見ないでよ!



い、今、着替えてくるから!』











慌てて背を向けると道明寺があたしを後ろからギュウッと抱きしめてきた。











・・・ドキン・・・













『着替えなくていい』











背中越しから香る甘いコロン。



あたしのドキドキは最高地点に到達。









・・・でも今は この腕から逃れないと・・・












『///なっ、何言ってんのよ・・・離して///』












『・・・それは無理だ。



おまえがそんな格好してるから悪いんだぜ・・・』












と言ってあたしを離さない。














・・・もう・・・こうなったら・・・













ボフッ!!!












『くぅぅぅ!!!・・・ってーな!!!』










あたしの右肘が道明寺の脇腹に見事に炸裂。










道明寺がうずくまっている隙に 慌てて着替えを済ませ、


背後でブツブツ言ってる文句を聞き流しながら、ヤカンに火をかけた。












///危なかった・・あの勢いだと・・また・・・///















道明寺がいると思うだけで自然に笑みがこぼれる。




でも・・・嬉しい顔を見せてしまうと絶対自惚るに決まってる。





見透かされないようにしないと。 






















『とうとう・・・やったな』











点けたままのテレビを観ながら目を細める道明寺。




その表情はいつになく柔らかい。












『優菜さん・・・綺麗だね』














『悪かったな・・・ちゃんと答えてやれなくて』










申し訳なさそうに道明寺があたしに視線を送る。










『ううん、いいの。



昨日ね、優菜さんからいろいろ聞かせてもらったし』










・・・口には出せないけど・・あんたのこと見直しちゃったよ・・・












『そっか』













『そういえば・・・道明寺よりあたしの方がタイプだって言ってたよ。


面白いよね・・・優菜さん。


冗談ばかり言うんだもん』









あたしは苦笑しながら庶民のコーヒーを出した。












『・・・おい、それ・・・冗談じゃねーぞ』











一瞬にして表情が険しくなった道明寺。














『・・・何・・言ってんの?



冗談に決まってるでしょ?優菜さん笑ってたし』












・・・そうよ、笑ってたもん・・・












『ヤバイな・・・』












『えっ?何が?』












『絶対にヤベーよ!!!』












『だから、何が!?』












ハッキリしない道明寺にあたしは苛立ちを隠せない。










『あいつ・・・手を握ったりしなかったか?』













『手?・・・あぁ・・・うん。握られたけど・・。あと別れ際にハグされた』










・・・なんか不思議な気持ちだった・・・





・・・だって本当は男の人なのに・・・姿は女の人だもん・・・





・・・どっちに抱きしめられてるか わからなかった・・・













『はっ、ハグだとぉぉぉ!!!絶対に許さねー!!!』











いきなり怒り出す道明寺。













『優菜さん・・・今は女の子なんだし・・・そんなにカリカリしなくても・・・』












・・・別にイヤじゃなかったし・・・












『おまえな!隙ありすぎなんだよ!』












・・・カチン・・・













『ちょっとあんたね!その言い方おかしいわよ!



だいたいね、優菜さんは男の人が好きなんでしょ?』












あたしの声も荒くなる。













『あ、あいつはな!



ばい・・・ばい・・・ばい・・・』













何かを言おうとする道明寺。



でもその次の言葉が なかなか出てこない様子。










『何よ?ばいばいって・・・』












・・・全然意味わからないし・・・














『バイセク・・・



あぁ!!!めんどくせー!



つまりだな!あいつはどっちでもアリなんだよ!』













『へっ・・・?』












『へっ?じゃねーつーんだよ!バカ!!!』













・・・どっちでも・・・アリ?・・・






・・・何よそれ・・・






・・・!!!・・・






・・・それって・・まさか・・・

















・・・バ、バ、バイセクシャルってこと!?・・・





















あたしは気絶しそうになった。







・・信じられない・・・








・・・優菜さんが・・バイセクシャル・・・だ・・なんて・・・







・・・だからこの前・・抱きつかれなかったか?って言ってたんだ・・・













『優菜のヤロー!今度会ったら 絶対ぶん殴ってやる!!!』

















今にもテレビの画面に飛びかかりそうな勢いの道明寺。




その姿はまるで子供。




いくつになっても全然成長してないなぁ・・・と ため息ひとつ。




でも、そういうところが案外可愛く思えたりもする。













とりあえず・・・



怒り心頭の道明寺を落ち着かせるには・・・




やっぱりこの方法しか・・・ないのかも・・・















・・・///CHU♡///・・・












ギャーギャー騒いでる そのくちびるを塞いだあたし。







不意をつかれた道明寺は耳まで真っ赤にして・・・しばらく硬直状態。











・・・効果・・あり・・・














・・・だと思っていたのに・・・




それが逆に道明寺の野性に火をつけてしまったみたいで・・・










今度はあたしに・・・










熱いキスのお返しを・・・
















・・・どうやらあたしの負けみたい・・・









・・・やっぱりこいつには一生勝てないのかも・・・・


















そういえばあたしたちケンカしてたんだよね。




すっかり忘れてた。












それじゃあ・・・






今だけ休戦協定結んであげるから。










・・・このキスが終わったら覚悟してよ?道明寺・・・
















〜キスの温度・第3章【いち】行ってみる?〜











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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【なな】

►2008/01/29 10:35 









『つ・く・しちゃん♪』











その声を聞いたのはあれから2日後のこと。



再びあたしの前に現れた優菜さん。



今日もサングラスと帽子を被って変装してるけど、


かなりバレバレなんですけど・・・?




周りを見渡したけれど、どうやらSPはついていないみたい。





どうやらお忍びのようです。














『どうしたんですか?』










あたしはその手を休めて彼女に近づいた。


一応、周りを確認しながら。









『ごめんなさいね、この前は。いきなり現れちゃって・・・』












・・・今日も・・いきなりだと思うんですけど?・・・













『い、いいえ。



こちらこそ とんだところをお見せしちゃって・・・』








思い出すだけでも情けないというか・・・


頬をポリポリと掻きながら上目遣いで謝るあたし。。









・・・下着、下着って連呼しちゃったし・・・



・・・しかも優菜さんの前で大喧嘩・・・












『いいのよ、そんなこと。



それより・・・ちょっと時間ある?あなたと話がしたいのよ』









・・・話?・・・











『あ、はい。


あと少しで休憩に入るんですけど・・・』











『じゃあ、ここで待っててもいい?』












と優菜さんはスタスタとスタッフの控え室に入ってきた。











『あ、あの・・・ここは・・・』











『いいの、いいの。気にしないで。



あたし、こういうところ平気だから』











優菜さんはそんなことはお構い無しに、業務用のパイプ椅子に腰を下ろした。




長い足を組み替えながら、雑誌をパラパラめくっている姿は本当に絵になる。




在庫の下着の山の中にスーパーモデルの優菜さんがいるなんて、激レアな光景だわ。




こんなところマスコミに見られたら間違いなく大騒ぎだよね?




話があるって言ってたけど・・・なんだろう。




やっぱり・・・道明寺のことかな?




まだ優菜さんから道明寺への気持ち・・・まだ聞いてないし。





この前の様子から見ても道明寺とすごく親しそうだし。




でも、あたしと道明寺の関係には気づいてるはずだし。




実際のところどうなんだろう?




そういえば・・・道明寺が変なこと言ってたっけ・・・




「あいつは例外」・・・だとか。












あの日の翌朝、ケイタイに残ってた着信履歴・・・



全てあいつの名が連なっていた。



ほとんど時間差もなく かけたみたいで・・・きっとイライラしてたんだと思う。



ちょっと怖かったけど折り返し連絡をしたら、今度は道明寺が電話に出なくて。



その後も何度か電話をかけ直したけれど・・・全然繋がらないし。








・・・この前のことまだ怒ってるのかな?・・・・








10分後、休憩を終えた奈緒美先輩が戻って来た。



突然の訪問者に驚いていたけど、優菜さんのサインが効果あったようで


すんなりと休憩に出してくれた。


























あたしと優菜さんは路地裏の小さなカフェに入った。




優菜さんはデパートのカフェでもいいと言ってたけど、


人気の多いところではさすがにマズイと思った。





ここは落ち着いたカフェで、何度か先輩と仕事帰りに立ち寄ったことがあった。



薄暗く、ゆっくり話をするにはちょうどいい場所。



ひかえめなジャズとコーヒーの香りが漂う。



まさに「大人の隠れ家」といった感じ。



時間的にお客さんも少なく、あたしたちは一番奥の席に座った。














『あのぉ・・・』













先に口を開いたのはあたしの方だった。















『なぁに?つくしちゃん』














のんびりとコーヒーを口にする優菜さん。














『お話って・・・なんですか?』















『話?



あぁ、別にたいした話はないんだけどね.。



ただ、つくしちゃんとゆっくり話がしたかったの』
















『はぁ・・・』














『ねぇ、あたしと司の関係・・・気になる?』













・・・ドキッ・・・





・・・いきなり直球勝負・・デス・・カ!?・・・














『・・・そ、そう・・・です・・ね』















・・・気にならないはずが・・ない・・・



・・・公の場でキスしちゃうんだもん・・・



・・・そりゃ、誰だって・・・













『大丈夫よ。


至って健全な付き合いだから』















『えっ・・・?』











・・・至って・・健全・・・



・・・あれが・・健全・・・









『どっちかっていうと・・・


つくしちゃんの方が好みかな♪』











・・・へっ?・・・



・・・こ、好みって・・・




・・・何ですか?その意味深な微笑みは・・・
















『あっ、えっと・・・』














返す言葉がみつからない。














『うふふ。冗談よ、冗談』














・・・冗談・・って・・・




・・・よく 分からない・・・この人・・・















『司とはね・・・NYの大学で知り合ったの。



その頃のあたしはまだ・・・



男だったんだけどね』
















『そうだったんですか・・・男だった・・・』
















・・・えぇぇぇ!!!!!?????・・・




・・・おっ、おっ、男って・・・優菜さんが!?・・・






・・・う、ウソよ・・・



・・・きっとまた冗談って言うに決まってる・・・


















『じょ、冗談キツイですよ!



本気にしちゃうじゃないですか・・・』













なぜか、コーヒーカップを持つあたしの手が震えてる。














『あら、本当よ。



司から何も聞いてないの?』














・・・あっ・・・




・・・道明寺が言ってたのって・・・




・・・でも・・・どう見ても・・・どう逆立ちしても・・・




・・・女にしか見えないんですけど!?・・・
















『今回来日したのは そのことをカミングアウトするためなの。




そろそろ白状しちゃおうかな〜って思ってね』

















・・・カミングアウトって・・・
















『だから、マスコミが騒いでいる司との結婚は絶対あり得ない話なのよ。




だって心や身体が女になっても・・・戸籍上では男なんですもの』
















『・・・』














・・・言葉が・・・でない・・・


















『あたしには3人の姉がいてね、いつも一緒に遊んでたの。



おままごとや、着せ替え人形とか女の子の遊びばかり。



姿は男の子だけど、大きくなったら女の子になれると思ってたの。



でも・・・成長するに連れて、身体が大人になっていく・・・



それがすごく苦痛だった。



自分の気持ちと身体がつり合わない現実に絶望したわ。



17歳の時に姉の服を着て、お化粧をしていたあたしの姿を



偶然父親に見られてしまってね・・・



泣きながら何度も殴られたわ。顔がボコボコの岩になっちゃうぐらい。



当たり前よね・・・唯一の後継者の男の子だって喜んでたのに


女の子の格好してるんですものね。




あたしも父親の涙を見て本当に申し訳ないと思ったし、


リセットするにはちょうどいいと思って留学することにしたの。




環境が変われば少しは変われるかな?って思っていたんだけど・・・



全然ダメだったわ。




あたしの心はすでに女の子だったから。




そんな時に、司と知り合ったのよ。




司はいつも真っ直ぐで、自分の気持ちに正直で・・・すごく羨ましかった。





ある日ね・・・あたしがどうしようもなく落ち込んでいたときに、



司があなたの話をしてくれたのよ・・・』














『あたし・・・の話?』












『そう。普段はプライベートのことを全く話さない司がね。



自分がNYに来た理由、そして愛する人を残してきた葛藤とかいろいろ・・・



包み隠さず全て話してくれた。



そんな一面があるなんて想像もしてなかったし・・・驚いたわ』












・・・そうだったんだ・・・











『その時にね、言ってくれた言葉があたしの人生を変えてくれたの。




『人生は一度だけだ。後悔する生き方はするな』・・・ってね。




ガツンとやられたわ。




あの一言がなかったら・・・



あたしはずっと自分を偽ったまま生きていたと思う。




だから司には 感謝しているのよ。



あたしの背中をポンと押してくれたのだから・・・』














・・・今の優菜さん、とても・・綺麗・・・














『そりゃ、司ってカッコいいし、とても魅力的だけど・・・



あなたのことあんなに幸せそうに語ってくれちゃうんだもの。



つけ入る隙がないじゃない。



だから一生友達でいようと思ったの。




あ、これ深い意味はないからね』














『あ・・・でも・・・その・・道明寺とキスを・・・』












思わず自分の口から出てしまった・・・一番聞きたかったこと。














『あ、あれ?



あれは女になったよって・・・父親へのパフォーマンスだったの。



ゴメンなさいね、嫌な思いさせちゃって・・・』














『い、いいえ・・・』












・・・道明寺が言ってたパフォーマンスって・・・



・・・このことだったんだ・・・















『前に一度だけ・・・あなたの写真を見せてもらったことがあるのよ』













『道明寺が・・あたしの写真を?



持ってるはずないんですけど・・・』














・・・だって一緒に撮った写真はあの1枚だけ・・・



・・・しかも頭だけだったし・・・













『親友に送ってもらったって言ってたけど?』












・・・もしかして・・それってお祭りコンビ?・・・











『だから、初めて会ったとき どこかで会ったような気がしたのね。



でも・・・この前のケンカ本当に面白かったわ。



司があんなにムキになるなんて・・・



本当にあなたのことが好きなのね』









優菜さんは頬杖をつきながらクスッと笑った。

















ようやく・・・謎がとけたって感じ。






道明寺が言ってたことウソじゃなかった・・・





あたしに言わなかったのは・・・



きっと優菜さんの気持ちを大切にしたかったから・・・











でも・・・優菜さん・・・



カミングアウトするって言ってたけど・・・



本当に大丈夫なのかな?・・・




マスコミとか絶対に黙ってはいないだろうし・・・




どんな誹謗中傷があるか分からないのに・・・






そこまでして・・・







そんな優菜さんが気がかりでならなかった。













〜キスの温度・第2章【はち】・完結読んじゃう?〜









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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【ろく】

►2008/01/28 10:56 














・・・まずい・・・




・・・絶対にまずい・・・









数時間前に「甘いキス」を交わした相手が目の前に・・・いる。




その相手が今では 牙をむき出しにしてずっとこっちを睨んで・・・いる。







今のあたしは・・・




ヘビに睨まれた・・・





カエルだ。

























『・・・こんなところで何してんだ?』













・・・き、きた・・・




・・・やっぱり・・怒って・・・る・・・




・・・久しぶりに・・見た・・・青筋・・・












『し、仕事・・・で・・す』











・・・うわぁ〜声が裏がえるぅ・・・・・・












『見ればわかる』












冷静な表情であたしを見下ろしている。




冷静であればあるほど、怒りに満ち溢れているのがわかる。




まるで嵐の前の・・・静けさのよう。









・・・と、とにかく落ち着くのよ・・・












『あ、あの・・・


何かお探し・・でしょうか・・お客様?』













・・・うわ〜!何言ってんだろ・・あたし・・・









すごく心臓に悪い・・・この緊張感。




顔がひきつって・・・笑顔にならない。














『なっ、なんで俺が女物の下着を探さなきゃならねーんだよ!バカかっ!?』











真っ赤な顔で声を荒げるお客様。




その隣りで優菜さんがおかしそうに プッとふきだす。













『失礼いたしました』











『で・・・、ここでヒラヒラしたもん売ってんのか?』











・・・何よ、ヒラヒラって・・・










『・・・はい』












『嘘ついてたのか・・・おまえ』












・・・カチン・・・





・・・だ、ダメよ。怒っちゃ・・ダメよ・・・あたし・・・



・・どこで他のお客様が見ているのか わからないんだから・・・












『嘘などついておりません。



ただ言葉が足りなかっただけでございます。



申し訳ございませんでした』











・・・なんで・・あたしが頭下げなきゃなんないのよ!・・・





・・・こっちは真面目に仕事してるっていうのに!・・・












『こんなところで働いてて・・・恥ずかしくねーのかよっ!?』











目の前のお客様は あたしに刺激を与えるような言葉を再び投げかけてくる。















『・・・』













『恥ずかしくねーのかって聞いてんだよっ!?』












・・・ブチン・・・







あたしの中で鈍い音がした。












・・・我慢、我慢よ・・・我慢するのよ・・・




・・・と心の天使が必死にあたしをなだめる。









・・・このまま言われっぱなしでいいのか!?・・・





・・・と心の悪魔があたしを執拗にあおる。











・・・怒っちゃえ!・・・






・・・ダメよ!怒っちゃダメ!・・・









天使と悪魔があたしの中でケンカを始めた。










・・・どうする?・・・







・・・どうするの?あたし・・・















・・・あぁ!!!もう、めんどくさ〜い!!!・・・























『恥ずかしいですって!?冗談じゃないわよ!



これでもちゃんとした仕事なのよ!誇りを持って仕事してるの!



あんたにとやかく言われる筋合いはないんだから!』










ずっと堪えてた本来のあたしがようやく顔を出した。





ここまできたら、もう・・・止まらない。















『なんだとぉ!!!今すぐにでも辞めてもらうからなっ!



こんなところには おいとけねーっ!!!』












『こんなところですって!?今の言葉撤回しなさいよ!



言わせてもらうけどね、 下着って身につける物の中で一番大切なのよ!



世の中で下着を身につけない人っている!?



あんただってパンツ穿いてるでしょうがっ!!!』











あたしの口調も荒くなる。











『てっ、てめー!逆ギレか!?




おまえが辞めねーなら 俺が辞めさせるように言うからな!』











『なっ、何バカなこと言ってんのよ!



勝手なマネしないでよね!



絶対!絶対に辞めないからねっ!』












『辞めろ!!!』














『辞めない!!!』
















『ちょっと、二人とも止めなさいよ!』



つくしちゃん、落ち着いて!



司、あんたもムキになりすぎよ!




とにかくここは冷静になって・・・』













『牧野さん、どうしたの!?



お客様にそんなに大きな声をだして!』









あたしたちのやり取りに気づいた奈緒美先輩が慌ててやってきた。












『あ、いえ・・・違うの。



こちらの店員さんに下着を選んでもらってたのよ。



せっかく選んでもらってるのに、彼がこっちの方がいいって


駄々をこねるものだから・・・』










そういって優菜さんは咄嗟に手にしたスケスケの下着を差し出した。










『然様でございましたか』










『ばっ、バカなこと言うんじゃねー!!!そんなの選んでねーよ!』











『もう、耳まで真っ赤にして・・・


照れ屋さんで参っちゃうわ。おほほほほ・・・』










優菜さんがフォローしながら、道明寺が暴れないように



片手でしっかりと腕を掴んでいる。















『あの・・・優菜様。



大変差し出がましいとは存じますが・・・



そろそろトークショーのお時間が・・・』











『えっ・・・あら、もうそんな時間?早く行かないとまずいわね。



そちらの店員さん、ゴメンなさいね。不愉快な思いをさせてしまって。



あたしが後でみっちりと叱っておきますから、どうかお許しになってね。



ほら行くわよ!司』











『はっ、離せよ、優菜!俺はまだこいつに話が!』











ジタバタとする道明寺を力づくで引っ張って行った優菜さんは



別れ際あたしにウインクを残していった。












嵐が過ぎ去ったあと、気が抜けてその場に座り込んでしまったあたし。









・・・はぁ〜・・・






重苦しい ため息ひとつ。














・・・とうとう・・・バレちゃった・・・




・・・あとで、またブツブツ言われるんだろうな・・・




・・・あぁ・・・気が重いなぁ・・・
















『牧野さん、大丈夫?』










座り込んだあたしを覗き込む奈緒美先輩。










『あ、はい。大丈夫です』











あたしは先輩の手を借り、ゆっくりと立ち上がった。











『突然 ウワサの二人が現れたんだもん・・・そりゃ、誰だって驚くわよ。




下着をめぐってのケンカなんて・・・ちょっと笑っちゃうわよね。



やっぱり、あの二人・・・親密な関係よね。間違いないわ。







それにしても・・・道明寺財閥の御曹司、カッコよかったわねぇ♪



とても紳士的だし・・・もうドキドキしちゃった。



あの鋭い目・・・ゾクゾクしちゃう。



あんな人が彼氏だったら最高よね!



・・・そう思わない?牧野さん♪』










あたしの隣りで すでに目がハートマークになっている先輩。










『あんな 分からず屋、全然紳士じゃないつーの!ブツブツ・・・』












『えっ?何か言った?』










『あ、いえ。・・・ただのひとりごとです。


あははは・・・』














せっかく始めた仕事だもん。



道明寺が何と言おうと絶対に辞めないんだから!








































『それにしても今日は・・疲れたなぁ』











アパートに帰って来るなり 迷うことなくベッドに身を沈めたあたし。





イベント終了後、優菜さんプロデュースの下着を買い求めにやってきた


お客様の対応に追われ、休憩時間カットで働いたせいか


仕事が終わる頃には すっかり足が棒になっていた。






驚いたことに その商品は見事に完売。





優菜さんの宣伝効果は 如何に絶大なものかということを身をもって体感した。




おそらくこの効果はしばらく続きそう。



















・・・道明寺の匂いが・・する・・・













アパートに泊まった道明寺の甘いコロンの香りが


ほのかに残っていてた。











・・・また・・ケンカしちゃったな・・・







・・・道明寺・・まだ怒ってるかな?・・・








・・・どうしていつも こうなっちゃうんだろう・・・








・・・こんなにも・・・好き・・・なのに・・・















そんなことを思いながら・・・



いつしかあたしは 甘い香りと共に深い眠りに落ちてしまった。








バックに入れたままのケータイが 鳴り響いてることさえも気づかずに・・・






















〜キスの温度第2章・【なな】読んじゃう?〜








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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【ご】

►2008/01/27 01:32 




その日の朝はとても慌しかった。




道明寺の言うとおり、夕方からイベントホールで

優菜さんのトークショーを行なうことになったのだ。



急遽決定したということもあり、現場は戦場と化し、


バタバタと関係者が走り回っている。




時折、上司が部下を怒鳴りつけている姿を何度か見かけた。



それくらい今日のイベントが如何に重要なものなのか、こちらにもピリピリムードが伝わってきた。





イベントに無関係だったあたしはいつものように、


新作のディスプレーや商品の補充などオープン準備に追われていた。








・・・それにしても今日はやけに男性社員の姿が目立つな・・・



・・・優菜さん目的だということがバレバレだよ?・・・



・・・やっぱり男の人ってキレイな人には目がないのかな?・・・






・・・それはそうと今日の主役の優菜さん・・・大丈夫だったかな?・・・



・・・かなり飲んでたし・・・もしかして二日酔いだったりして?・・・



・・・道明寺は大丈夫だって言ってたけど・・・やっぱり女の子だし・・・



・・・いきなり帰っちゃったし(正確には拉致られたというのが正解)、100%怪しまれてるよね?・・・































『牧野さん、今から企画室に行ってくれないかな?』










『えっ・・・?あたしが・・・ですか?』








大きなダンボールを抱えていたあたしは思いがけない奈緒美先輩のその言葉に立ち止まった。










『急なイベントで人手が足りないそうなのよ。



あたしは これからお得意様がみえるから 持ち場を離れるわけにはいかないし・・・



お願いできないかな?』







困ったような顔で両手を合わせる先輩に目をぱちくりさせるあたし。










『あ・・・でも・・・


そこで何をすれば・・・』










『イベント会場のセッティングとか、整理券発行とかいろいろ仕事があるみたいなの。



そこに行けば何らかの指示があると思うから・・・』













『・・・でも。あたしに務まるでしょうか?経験ないですし・・・』








あまりにも突然のお願いに不安は隠せない。











『企画室・・・』












『・・・?』












『入りたかったんでしょ?』












『し、知ってたんですか?』











驚いたあたしに先輩はニコっと微笑んだ。











『いいチャンスかもしれないわよ?勉強にもなるしね』











・・・チャンスか・・・




・・・確かにいい経験になるかもしれないな・・・













『わかりました。


じゃあ先輩、ここを宜しくお願いします。大体の準備はおっけーですから』
























ドキドキしながら現場に到着したものの・・・



かなりドタバタしていて誰に声をかけたらいいのか・・・わからない。





・・・困ったな・・・





企画室の前でしばらくウロウロしていると・・・















『どうしたんですか?』










・・・ビクッ・・・







挙動不審の?あたしを怪しんだのか、その人は背後から声をかけてきた。






ゆっくり振り返ると、そこに長身の男性が不思議そうに立っていた。



やっぱり怪しまれてる?








『あ、あの。その・・・


人手が足りないと聞いて・・応援に来たんですけど』









緊張しているせいか つい声が裏返ってしまった。











『あぁ、ホントに?よかった助かるよ。猫の手も借りたかったぐらいなんだ。




・・・えっと、君は・・・牧野さんだよね?』









・・・えっ?・・・




・・・どうして・・あたしの名前を?・・・











『俺、黒木です。よろしく』












『よ、よろしくお願いします・・・』












頭を下げながら『あれ?』と思った。










・・・黒木・・・




・・・どこかで聞いたような・・・




・・・あっ・・・




・・・昨日先輩が話してた彼だ・・・





・・・この人が・・あたし・・を?・・・










ニコっと目の前の彼は微笑んでいたけど、あんなこと聞かされちゃった後では


何となく気まずくて 微笑返しも顔が引きつってしまった。









企画室の方々にひと通り挨拶を済ませると、


そのまま黒木さんのお手伝いをすることになってしまった。





間接的に・・・とはいえ、本人の気持ちを聞かされているのだから、


意識していないつもりでも・・・心のどこかで意識してしまう自分がいる。





目が合うたびに笑顔を見せる彼に戸惑いを感じてたけど・・・



他にも助っ人が数名いたこともあって、2人きりになることはなかったので内心ホッとしていた。




その後のあたしは・・・というと・・・



若手にもかかわらずテキパキと仕事をこなす黒木さんに感心しつつも、


足をひっぱらないように与えられた仕事を黙々とこなしていた。




仕事の要領が想像とはかけ離れていたけど、かえってそれが新鮮で刺激を与えてくれたような気がする。





仕事で感じたことのない充実感・・・




もちろん今の仕事に不満はないけれど、いつかこういう仕事がしてみたいと・・・



もっともっと上を目指してみたい・・・そう思った。








昼食も取らないまま仕事に没頭し、気がついた頃はすでに


14時を軽くまわっていた。









『牧野さん、ちょっと休憩しない?』








あたしが軽く伸びをしていると黒木さんが声をかけてきた。









『あ・・・はい』















他の助っ人の人たちはそのまま持ち場に戻ってしまたために・・・


どういうわけか・・・あたしと黒木さん二人きりになってしまった。






黒木さんに誘われ向ったのが地下にある社員食堂。



いつもお弁当持ちのあたしは、ここに来るのは初めてなのだ。





ウワサには聞いてたけど本当に社員食堂?って思ってしまうぐらい


豪華なもので驚いた。




グリーンがあちこちに配置されていて


仕事のONとOFFを切り替えてくれるようにリラックスできるスペースになっている。






遅めの昼食をとる社員もかなり多く、ほぼ満席状態。




席を見つけるのに一苦労。





遠慮したのにもかかわらず、『女の子にはお金を出させたくないから』・・・という理由で


ランチをごちそうしてもらうことになった。




奢ってもらうのが苦手なんだよね・・・昔も今も。





















・・・???・・・




・・・えっと・・・ええっとですね?・・・




・・・さっきから女子社員の視線が痛いんですけど?・・・





・・・異様な殺気を感じるのはあたしだけでしょうか?・・・











おそるおそる周りに視線を送ると・・・。











・・・ビンゴ!・・・










・・・あたしを睨む理由・・・








・・・それは間違いなく・・・













『牧野さん、どう?美味しい?』










ニッコリと覗き込む彼が原因だと思う。











『えっ・・・


あ・・・はい。美味しいです』













・・・あまり・・・話しかけないで下さい・・・



・・・みんな・・あなた狙いですよ?・・・




・・・こういう視線を感じるのは英徳以来だわ・・・













『よかった。本当なら ちゃんとしたものご馳走したかったんだけど』











『いいえ、あたしいつもお弁当なので・・・こういうところで食事もいいですね』








・・・ちゃんとしたものって・・・これだってちゃんとした食事ですよ?・・・








心の内を見せないように答えると、彼は嬉しそうに笑った。








・・・まるで子供みたいに・・・
















『そういえば昨日・・・奈緒美と食事したんだって?』











『えっ・・・?あ、はい』












・・・もう、知ってるの?情報早すぎ・・・













『俺のこと・・聞いた?』












食べかけのハンバーグをポロリと落とすあたし。











『え・・・あ・・・はい・・・まぁ・・・』









・・・ストレートすぎるっ!・・・






いきなりそんなことを聞かれて動揺しないほうがおかしい。



顔が一気に熱くなる。










『牧野さん彼氏・・いるんだってね』











・・・ドキッ・・・











『・・・ハイ。一応』













『ふぅ・・・そうか・・・』











頬杖をつきながら、いかにも残念そうに ため息をつく黒木さん。












『すみません』












『じゃあさ、友達から始めるっていうのはどう?』














『はっ?』










・・・友達から?って・・・




・・・何、言ってんの?この人・・・













『もしかしたら、彼氏より俺のほうが君と相性いいかもしれないし・・・心も、


もちろん身体もね。



とりあえず、友達からスタートして・・・お互いを知っていくっていうのは・・どうかな?』










・・・心も・・身体もって・・・






・・・言ってる意味が全然わからないんですけど?・・・





・・・伝わっていないのでしょうか?・・・






・・・もう一度言いますね?・・・











『あの、あたしにはちゃんと彼が・・・』











『あ、俺・・・彼氏がいても全然気にしないんだよね。



どっちかっていうとそういう方が かえって燃えるんだ』











・・・燃えるって・・・





この人・・正気なの?・・・




・・・ちょっと前向きすぎるんじゃ?・・・




・・・・彼氏がいると聞いたら・・普通諦めるんじゃないの?・・・











『そんな困った顔しないでよ、牧野さん』












・・・困るに決まってるでしょ!?・・・





・・・あたしが二股なんて かけられるわけないじゃない!・・・













『君を研修で見かけたときからずっと声をかけたかったんだ。



でも、そんな隙さえなかった。



君、すごく熱心に研修受けてたしね。



もうダメかと思ってた。




そんな時、君が奈緒美と同じ所で働いてるってことを聞いて、これはラッキーだと思ったよ』










・・・ラッキーって・・・




・・・そんなこと言われても・・・











『ようやくチャンスが巡ってきたって感じかな・・・


・・・ということで・・・俺のこと考えておいてね』









そう言いながら彼はゆっくりと席を立った。










『あ、あの!・・・あなたと付き合うつもりは・・・』












『言ったでしょ?彼氏がいても気にしないって。



付き合って損はないと思うよ。



じゃあ、俺、まだ仕事山積みだから先に戻るよ。



またね、つくしちゃん』












『あ、あのっ!!!』








あたしの言葉など聞く耳持たずそのまま背中を向けた彼。





あまりにも強引すぎる態度に困惑。





このことを道明寺が知ったら・・・







・・・どうしよう・・・























イベント開始まであと30時間。




整理券待ちの若い女性たちがすでにフロアーを占領していて


雑誌やテレビの関係者の多さが彼女の人気ぶりを表していた。








助っ人の役目を終えたあたしは持ち場に戻り、


さっきの出来事がすごく気になっていたけど仕事ONモードに切り替えた。













『店員さん、一緒に選んでもらえるかしら?』











背を向けていたあたしに声がかかった。





くるりと笑顔で振り返る。








『はい、どういった感じの・・・』











・・・!!!・・・










その姿にあたしは目を丸くした。



驚きのあまり・・・声がでな・・い。











サングラスを取った彼女はにっこりと微笑む。










『ゆ、ゆ、ゆ、優菜さん!!!




ど、どうしてここに!?』










『会場入りしたときに つくしちゃんがカッコイイ男の人と一緒にいるのを見かけて・・・』












『えっ!?』












・・・み、見られてた・・の!?・・・











口をパクパクしているあたしに優菜さんはクスッと笑い、


『大丈夫・・・司には言わないから』・・・とイジワルっぽく耳元で囁いた。











『おい、優菜!こんな所でなにしてるんだ!


そろそろ時間・・・』












『あっ・・・』












あたしの動きが止まる。






そんなあたしに気づいた相手の動きも同時に止まる。










あたしの視線の先には・・・



















〜キスの温度・第2章【ろく】読んじゃう?〜

















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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【よん】

►2008/01/25 08:20 

『い、痛い!離してよ!』








突然現れた人物に無理やり腕を掴まれ、


そのまま引きずり出されるようにラウンジを後にしたあたし。






歩く足の速さについていくのがやっとで、


その手を振り払う隙さえ与えてもらえない。







目の前にある大きな背中から苛立ちが伝わってくる。





乗り込んだエレベーターの中でも 何も話しかけてこない。



かといって、こちらから話しかける雰囲気でもなく・・・



とにかく一切、目を合わせようとしないのだ。









・・・どうして・・そんなに怒るのよ・・・




・・・女の人と一緒にいただけなのに・・・










そして、いかにも高級そうな一室に連れ込まれると、


ようやく力強いその手から解放された。














『いったい何やってんだ!!!!!』











部屋に入るなり、烈火のごとくカミナリを落とす男・・・道明寺。











・・・そんな大声出さなくたっていいじゃない・・・










『あ、あのね・・・変な男の人に絡まれてるところを


彼女に助けてもらったの。


で、どういうわけか一緒に・・・』












『そんなこと聞いてんじゃねーよ!


何でケータイに出ねーんだよ!!!』












・・・???・・・













『ケータ・・・イ?』













・・・あっ・・・









慌ててバックの中をガサゴソ。


ポーチの下に眠っていたケータイを取り出す。









・・・電源・・・切った・・・ままだった・・・











あたしを見つめる道明寺の目は冷たい。





思わず顔が引きつってしまう。



取りあえず・・・。








『あははは・・・』












『笑ってんじゃねーよ!



すげー心配したんだぞ!



帰ったら連絡しろって・・出かける前に あれほど言ったはずだっ!』













・・・そっ・・そう・・でした・・よね?・・・






・・・出かける前に『くどい!!!』っていうぐらい・・言われました・・・よね?・・・






・・・とりあえず・・・。











『ゴメンなさい・・・』









道明寺は呆れた顔であたしの頬をつねる。






・・・イタタタタ・・・












『・・・ったく!フラフラしやがって。



全然成長してねーな・・・おまえ』












『そこまで言わなくても』・・と言いたいところだけど・・・


今、そんなこと言ったら・・怒りを鎮めることができなくなってしまう。




とりあえず・・・我慢、我慢。













でも・・どうしても腑に落ちないことがひとつだけ・・・ある。











『ねぇ・・・どうしてあの場所にいるってわかったの?』











『フン、こんなこともあろうかと・・・


おまえのバックにGPSしかけておいたんだよ・・・』













・・・GPS?GPSって・・いっ、いつのまにぃ!?・・・











『俺はおまえをまったく信用してねーからな』と


窮屈なネクタイを緩めながらハッキリ断言する道明寺。







・・・そこまで言われたら・・・返す言葉もない・・・



・・・この分だと一生信用してもらえないだろうな・・・




























『ねぇ・・・



彼女、置き去りにしちゃったけど大丈夫かな・・・?』














『あぁ・・・あいつは大丈夫だ・・・』











・・・大丈夫だなんて・・・彼女は女の子なんだよ?・・・











『それより・・・



おまえ、優菜に何もされなかっただろうな?』











怪訝な顔であたしを見下ろす道明寺。









・・・言ってる意味が全然わからないんです・・けど?・・・









『されるって・・・何を?』

















『例えば・・・だな。


抱きつかれたり・・・』












・・・だっ、抱きつく!?・・・












『何、言ってんの?あんた。相手は女の子なんだよ?』










・・・女の子にまでヤキモチやいてどうすんのよ!・・・




・・まったく・・こいつってよくわかんない!・・・













『あいつは例外だ』











・・・!?・・・






・・・ますます何を言ってるのか わからないんですけど?・・・












『例外って・・・何よそれ・・・』











『何もなければ・・それでいい』













・・・なにもなければ・・って・・・




・・・全然・・わかんない・・・




















あっ・・・もうこんな時間だ。




明日は早番だし・・・もう帰らないと・・・












『じゃあ、道明寺・・・もう遅いし帰るね』








時計を確認するともう25時をまわっている。


床に置いたままのバックを手にし、部屋を出ようと背を向けた。










『お、おい、ちょっと待て。



帰るって・・おまえ何時だと思ってんだよ!



こんな遅い時間に女ひとり帰すことなんてできるかっ!』











『大丈夫だよ、タクシーで帰るし』







・・・これしか交通手段がないんだけどね・・・










『ここから おまえんちまで遠いぜ? 金かかんだろっ』










『仕方ないじゃない。今更泊まるとこないもん』











『・・・おまえ・・ここをどこだと思ってるんだ?』










『そ、それが・・・どうしたの?



あたしここに泊まれるほどのお金・・持ってないし・・・』










・・・そうそう・・帰りのタクシー代も危ういっていうのに・・・




・・・こんな高級ホテル泊まれるわけないじゃない・・・












『俺様を誰だと思ってんだ?ここの社長の息子だぞ』












『だっ、だから・・・それがどうしたって言う・・のよ?』











・・・道明寺が・・何を言いたいのか・・・もうわかってる・・・






・・・でも・・・













『俺もここに泊まるから、おまえも泊まってけ』












『///えっ・・・?い、いいよ・・・///』










道明寺がジリジリと近づいてくる。






思わず後ずさりしてしまう あたし。












・・・なんか・・急に積極的になったんじゃ・・・ないの?・・・





・・・この目・・やばい・・かも・・・















『///ちょ、ちょっと・・あんた・・・



変なこと考えてるんじゃないでしょうね?///』















『変なこと?何言ってんだ?


愛し合ってるもん同士が一緒のベッドで寝るのは当然のことだろ?



何、今更 恥ずかしがってんだよ?』










そのまま道明寺に追い詰められ、ベッドに身を預けてしまった あたしは、


まともに視線を合わせることができない。









・・・///ドキドキする///・・・




・・・///だめだ・・・顔・・見られない///・・・












『泊まってけよ』












『///だ、だ、だって明日の着替え・・ないし///』












『用意させる・・・』















『///お花に・・水をあげなきゃ・・いけないし・・・///』












『1日ぐらい大丈夫だろ・・・』













『///それから・・・それから・・・///』












・・・声が震える・・・













『観念しろ・・・』







































『もう、あんたのせいだからね!』












甘い夜の余韻のせいなのか・・・




道明寺がなかなかあたしを離してくれなくて、


結局出勤ギリギリの時間になってしまった。







やむを得ず、職場まで道明寺の長い車で送ってもらうことに。





デパートの裏口に車を停めてもらい、あたしは周りの様子を伺いながら


車を降りた。












『ありがとう。じゃあ、行って来るね!』












あたしが小さく手を振ると、道明寺が車から降りてきた。











『どうしたの?』












『俺も今日、ここで仕事』
















『えぇぇ!?なっ、なっ、なんで?』











・・・は、初耳・・・













『今日、ここでイベントがある』











『いっ、イベント!?



あたし何も聞いてないけど・・・』











・・・そんなこと昨日、誰も言ってなかったよ?・・・













『あぁ、昨日の夜に決まったからな・・・』













・・・きっ、昨日!?・・・












『昨日って随分、急・・・ね・・』














『仕方ねーだろ。




優菜の帰国が早まっちまったんだから・・・』
















『優菜・・・ってまさか・・・



あの・・・その・・・下着の・・・?』












・・・その先はやっぱり言いにくい・・・













『あぁ、優菜のプロジェクトに俺もかかわってんだよ』











・・・そうなんだ・・だからいつも一緒にいたんだ・・・












『まぁ、その・・・なんだ・・・



おっ、おっ、女の下着 売ってるところは おまえには関係ねー所だろうから



一応安心してんだけどよ・・・』








・・・声・・裏返ってます・・けど?・・・










『あんただってその・・・



下着の仕事に携わってるんでしょ?



安心してるっていう言い方・・・変じゃない?




仮に、仮にだからね!



あたしがもしそこで働いても別にかまわないんじゃない?



あんたもそういう仕事してるんだし・・・



そんなに下着、下着って特別視しなくても・・・』
















『お、俺は仕事だから仕方ねーんだよ。



でも、おまえは別だ。あんなところには置いておけねーよ』








・・・あんなところって、そこまで言う?・・・









『そんなこと言うけど結構楽しいのよ、あの仕事』













・・・やばっ・・ボケツ・・掘った・・・













『何 熱く語ってんだ?おまえには関係ねーだろ?』











『えっ・・・そうよね・・・あたしには関係ない話よね』














・・・わぁ〜!!!関係ありありだっつーの!・・・





・・・あたしがそこで働いてると知ったら・・・大変なことになりそう・・・



















でも、まさか道明寺がかかわってるとは知らなかった。




と、とにかく・・・顔を合わせないようにしなくちゃ。









『ところで、おまえはどこに配置・・・』








・・・まっ、まずい!!!・・・









『じゃ、じゃあ、そっ、そろそろ行くね。道明寺も仕事頑張ってね!』











『おい、ちょっと待て』







くるりと背中を向けたあたしの腕をぐいっと引き寄せる。








『はっ、早く行かないとまずいのよっ』








当然焦る・・・あたし。









『ゴホゴホ・・・』









急に咳払いをする道明寺。



背を向けたあたしが振り返る。










『どうしたの?風邪?』











『バカ!ちがーよ!何か忘れてねーか?』










・・・???・・・









『えっ?


バックはあるし・・・あとは・・えっと・・・』












『///あぁ!!!もう わかんねーヤツだな!



行ってらっしゃいの・・・アレだよ///』











・・・行ってらっしゃいの・・アレ?・・・




・・・アレ?・・・




・・・アレって・・・まさか!?・・・














その意味に気づくと、道明寺は意味深にニヤッと笑った。











『///こっ、こんなところで できるわけないじゃない!



誰が見てるか分からないのよ?///』











『誰も見てねーよ!いいからグズグズすんな』










・・・グズグズって・・あんた・・・











『早くしねーと 人が来るぜ』










『///あぁ!!!もう分かったわよ!///』











・・・///CHU♡///・・・










あたしはつま先立って くちびるを重ねた。














・・・カシャ、カシャ・・・







・・・!?・・・










『い、今何か聞こえなかった!?』









思わず周りを見渡すあたし。










『///気のせいだろぉ〜・・・///』










道明寺は赤い顔でフラフラしている。











『ううん、確かに聞こえたのよ』












・・・変ねぇ・・・




・・・誰かに見られてた気がするんだけど・・・











『///そろそろ行ったほうがいいぜぇ〜///』












『あ・・・うん。じゃあ行くね』










『///おう。


仕事、頑張り・・・たまえ。・・・牧野くん///』












・・・牧野くんて・・あんた・・・





道明寺の頭から湯気が立ち上っていることに苦笑しつつも、



そのまま従業員専用入り口に向った。









・・・さぁ、また今日も頑張りますかっ!・・・




















でも・・・






この時、まだ知らなかった。






この先に何が待ち受けているのか・・・ということを。






あたしは・・・まだ何も知らなかったんだ。








黒い罠が仕掛けられていたということに。



















〜キスの温度・第2章【ご】読んじゃう?〜























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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【さん】

►2008/01/24 08:39 













『まったく、日本の男って軽い男ばかりなのよね・・・



あなたも護身術を学んでおいた方がいいわよ。絶対、役に立つから・・・』











『・・・はぁ』












『NYだったら間違いなく射殺ね・・・あの男』












『えぇ!?』












・・・しゃ、射殺・・・





一瞬にして頭の中が真っ白になる。












『冗談よ、冗談』












舌を出し無邪気に笑う彼女。












『・・・』







あ〜ぁ・・・驚いた。





あまりにもリアルな言い回しだったから・・つい本気にしちゃったじゃない!





















どういうわけか・・・







あたしは彼女と肩を並べている。









おかしい・・・





絶対におかしい・・・






どうしてあたしがこの人と一緒にここにいるのだろうか?








さっきからずっとそのことばかり頭を巡っている。






確かにあの男から解放してくれた彼女に・・・




『何かお礼をさせてください』と言ったけど・・・






よりにもよって・・・





ここを選ぶとは・・・















あたしの中に残る小さなトラウマの場所。
















・・・メープルホテル・・・














現在地・・・最上階・スカイラウンジ。

















『ところで・・・あなたと どこかであったような気がするのよね・・・』













・・・ギクッ!!!・・・












『た、多分・・・・人違いです・・・あたしみたいな子・・・いっぱいいますから』










・・・そうそう・・気のせいよ・・・





・・・空港で・・・彼女・・あたしの顔見てないはずだし・・・






・・・知るはずが・・ない・・・












『う〜ん・・・絶対にどこかで・・・』










必死に何かを思い出そうとしてる彼女。










・・・余計なこと思い出さないで・・いいです・・・










気がつけば・・・



深夜をまわっている。








もう・・・あたしの帰りの足はタクシーしかない。








・・・はぁ〜また赤字・・だ・・・









心の中でため息ひとつ。











もう・・・そろそろ帰らないと・・・





でも、助けてもらったのはこっちなんだし・・・





あたしから帰るとは言えないし・・・





ストレートには言えない。










そうだ・・・当たり障りなく遠まわしに・・・













『あっ、・・・あの・・・帰らないで大丈夫なんですか?


もうこんな時間ですし・・・』











『あ、いいの、いいの。気にしないで!


ここのホテルに泊まってるから平気よ』










・・・平気じゃないのよ・・あたしは・・・






・・・あなたはよくても・・あたしには仕事があるし・・・












『あ・・・そっかぁ・・・あなた仕事よね?』











『あ、はい。そうなんです』













・・・よかったぁ・・やっとわかってくれたのね・・・





・・・じゃぁ・・そろそろ・・・













『じゃあ、あたしの部屋に泊まれば♪』












・・・ど、どうしてそういう展開になっちゃうんでしょうか?・・・




・・・この人・・すごいマイペースだわ・・・



・・・良く言えば・・・天然・・・悪く言えば・・・鈍感?・・・












『ねぇねぇ失礼だけど・・・あなたいくつ?』










『22・・・ですけど』










『うわぁ!あたしと一緒!



これも何かの縁だし、今夜はパア〜っと飲みましょ!



NY生活長かったから日本の友達少ないのよ』












・・・パァ〜っと・・・って言われても・・・











困ったあたしを勘違いしたのか・・・







『大丈夫、気にしないで・・・飲み放題だから・・・』











・・・そういうんじゃなくて・・・



・・・余程あたしがお金に苦労してるように見えたのかな・・・









『ここの御曹司・・・あたしの知り合いなの♪』











・・・しり・・・あい・・・




・・・御曹司・・・







すごく嬉しそうに言われると・・・どう反応したらいいのか。













『あなたの名前は?』












『牧野・・・つくしです』











『あたしは優菜・・・よろしくね』










『あ・・・はい・・・よろしくです・・・』









・・・あたしのバカバカ!!!


どうして握手なんかしちゃってんのよ!・・・




何て細い指なの?


手入れの行き届いてない手を思わずカウンターの下に隠す。










こうして・・・すっかり彼女のペースにはまってしまったあたし。








話してみて思ったのは・・・



もちろん有名な人だからオーラがガンガンだけど・・・とにかく嫌味がない。


サバサバしてて明るい人だなって。



時折見せる笑顔がもとても可愛くて、つい話に引き込まれてしまう。



不思議な魅力を秘めた人。





















『はぁ〜』









さっきまで明るかった彼女が急に暗い表情で ため息を吐いた。


そんな横顔も絵になる。








『どうしたんですか?』










『つくしちゃんはお父さんとケンカとかする?』










『ケンカですか?・・・したことないですね。



っていうか・・ケンカの相手にもなりませんよ』










・・・パパはいつもあんな感じだし・・子供みたいなところあるし・・・












『そう・・・仲がいいのね。うらやましい』










頬杖をつき、グラスを軽くまわしながらそう言った。












『どうか・・・したんですか?』













『さっきね・・・ケンカしちゃったのよ』













・・・じゃあ・・あの時・・・お父様と・・・










『全然あたしの気持ちわかってもらえなくて。



きっと嫌われてるのよね』












苦笑する横顔が悲しく見えた。















『そっ、そんなことないと思います。



少なくとも娘を嫌う親なんていないと思います。



話し合えばきっとわかってくれると分かってくれますよ・・・親子なんですから。




血は水よりも濃いって言いますし。




あっ、ごめんなさい・・・あたし・・余計なことを・・・』




















『ううん・・・そうよね。



つくしちゃんの言うとおりかもしれない。



せっかくこのために帰国したんだもの』












・・・このため?・・・













『あたしもこのまま引き下がるつもりはないし・・・



父ともう一度よく話し合ってみる。



ありがとう・・・つくしちゃん・・・なんだか勇気がわいてきた!




よぉし!今夜はじゃんじゃん飲むわよ!』












満面の笑みであたしの肩を抱く彼女。



まるで昔からの友達だったみたいに。








ここまできたら仕方ない。



お付き合いしますか・・・
















『いや、もう結構だ・・・』

















・・・???・・・




・・・何・・・?今の声・・・













『ねぇつくしちゃん、今なにか聞こえなかった?』












首をかしげながらあたしを見る。













『聞こえたような・・・聞こえなかったような・・・』














背後から感じるドロドロとしたオーラ。




どうしてだろう・・・怖くて振り返れない。





なに?この威圧感は・・・







嫌な・・・予感。






・・・まっ・・・まさか・・・
















〜キスの温度・第2章【よん】読んじゃう?〜






テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【に】

►2008/01/23 09:06 





『どうしたの?牧野さん』








『あっ、いえ・・・なんでもないです』








『そうよねぇ・・・見惚れちゃうわよね。


同じ女性だとは思えないほど・・・完璧だもん』












仕事あがりのあたしの隣りで奈緒美先輩が目を細める。




つい・・立ち止まってしまうほどの美しさ。



ここまでの輝きをあたしは持ち合わせていない。














『・・・そうですね』












誰が見てもそう思うよね。





今朝まで強気だったあたしが・・・



ポスター如きに負けてしまっている。





弱いなぁ・・・あたし。















『彼女・・・なにか重大発表するらしいってウワサよ』












『えっ・・・?』










・・・なに?・・・重大発表って・・・











『もしかしたら一緒に帰国した道明寺財閥の御曹司との


婚約発表かもしれないわね・・・』











何も知らない奈緒美先輩はその話をサラッと口にする。











『・・・そう・・・なんですか』











そう言われても・・・



ただ話を合わせることしかできない。











そのウワサがあたしの中に再び重く圧し掛かる。











でも、道明寺はあたしを愛してるって・・・言ってくれた。



今はその言葉を信じるしかないんだよね。














『牧野さん・・・これから予定ある?』










『あ、いえ。別に予定はないですけど』










『じゃあ、一緒に食事でもいかない?』


































奈緒美先輩に誘われて向ったのはオシャレなレストラン。



食事に彩りを副えるかのように ゆっくりとピアノが流れる。




こうして同性と食事するのは久しぶり。




弾む会話。



他愛もないちょっとした話をするだけでも楽しくなる。










先輩は美人なのにもかかわらず、それを決して鼻にかけたりしない。



頼りがいのあるお姉さんって感じで、新人のあたしにも優しい。














『牧野さんは彼氏いるの?』









ワインを飲みながら先輩が問いかけてきた。









『ゴ、ゴホ、ゴホッ・・・』








口に運んでいたメインを喉につまらせてしまった・・・あたし。










・・・み、水・・・












『大丈夫?』













心配そうにあたしの顔を覗き込む先輩。











『はい、大丈夫・・・で・・す。ゴホッ、ゴホ・・・』












・・・大丈夫なわけ・・ない。どうしていきなりそんなことを?・・・














『いるの?』











『あ・・・ハイ。一応・・・イマス』











『やっぱりね・・・』












『えっ?』













『実はね、企画室にいる同期の男の子がね・・・



牧野さんのこと気に入ったらしいのよ。



彼氏いるのか確かめてくれってうるさくて。



自分で聞けばいいものを』












『はぁ・・・』











それしか言い返せない。











・・・企画室か・・・





・・・入りたかったな・・・















『黒木くんっていうんだけど・・・


背が高くてちょっと童顔の・・・


新人研修のお手伝いしてた人なんだけど・・・』












『はぁ・・・』












誰だろ・・・?



そんな人いたかな?



研修中はそれどころじゃなかった。



スパルタで毎日しごかれたし。











『その様子だと全然憶えてないみたいね』











・・・ハイ・・全然・・・











『す、スミマセン・・・』













『いいのよ、気にしないで。




あなた、男性社員に人気があるの知ってた?』











『い、い、いいえ・・・』










頭を思い切り振るあたし。







・・・そんなこと・・ありえないつーの・・・












『あなたの彼って きっとステキな人なのね』









頬杖をついた先輩があたしに微笑む。











『えっ、あぁ・・・・・・はい・・・まぁ・・・』












自分でそう答えておきながら、惚気ているみたいで急に恥ずかしくなった。




顔が熱くなってきちゃった。


















ガシャン!!!











何かが割れる音。



その音であたしたちの会話が止まった。






何事かと・・ゆっくりとそちらに視線を移すと初老の男性と


若い女性がなにやら言い争っている。









床に落ちた料理をウエーターが片付け、



レストランの支配人らしき人が仲裁に入った。











・・・こんなところで・・ケンカなんて・・・















さっきまで和やかだったレストランの雰囲気も、


一瞬にして険悪なムードになってしまった。











『ねぇ、あのテーブルにいる女性・・・



もしかして・・・優菜じゃない?』











目を凝らして その女性を見つめる先輩。











・・・?・・・





・・・ゆうな・・・?・・・






その名を聞いても・・・あたしの頭の中は『?』でいっぱいになる。







・・・有名な人?・・・















『あのぉ・・・ゆうな・・・って誰ですか?』










恥を忍んで聞くあたしに、




『本気で言ってるの?』




・・・と少し引き気味の先輩。













『あのポスターのモデルさんよ。


牧野さんが見とれてた彼女』












・・・えっ・・・





・・・あの・・人?・・・








突然出くわした人物に動揺しつつも・・・


なぜだろう・・・つい目で追ってしまう。












・・・間近でみると本当に・・キレイ・・・





・・・パンツスタイルがよく似合う・・・
















仲裁が入っても口論が止む気配は無い。








しばらくして・・・周りの視線を感じたのか、初老の男性は彼女だけを残して



慌しく会計を済ませると、足早にレストランを出て行ってしまった。








その姿にあたしたちは ただただ呆然とするばかりで、


男性が去った後も 結局、レストランの雰囲気が明るくなることはなかった。

































『先輩、ごちそうさまでした。今度はあたしがごちそうしますから』









『牧野さんが私よりお給料をもらえるようになったらね♪』









イタズラっぽく笑う先輩。









『あぁ!それじゃ、ずっとおごられっぱなしじゃないですか!?』











『うふふ。   


じゃあ、明日ね!おやすみなさい』







少しほろ酔いの先輩は嬉しそうに手を振って、そのまま帰って行った。













・・・それにしても・・すごいの見ちゃったな・・・




・・・見てはいけないものを見てしまったって感じ・・・




・・・道明寺に話しておいたほうが・・・いいのかな・・・




・・・でも・・あの人はあたしには関係の無い人だし・・・











あの後、ひとり残された彼女は何事も無かったように


毅然とした態度で店を出て行った。




でも・・・その後姿はどこか寂しさを秘めていた。










・・・なにがあったのだろう・・・



















『・・・もう帰ろう』









何気なく手元の時計を確認したあたしの目が点になる。











『あっ・・・急がないとバスに乗り遅れちゃう!』









あたしは慌てて走り出した。









するとバスが悠々とブーンと運動不足のあたしをを追い抜いていく。











・・・まっ、待ってぇ!!!・・・










バス停まであと50Mというところで・・・












・・・乗り遅れた・・・


















『はぁ・・・ぁ』











深いため息をひとつ。











・・・次のバスまでかなり待つようだな・・・









息を切らしながら、次のバスの時間を確認した。






あたしの住んでるところは都心からちょっと離れた郊外で



目的のバスに乗り遅れると大変なことになる。




研修中に一度だけ最終に乗り遅れて タクシーで帰ったという苦い経験がある。










・・・仕方ない・・・ちょっとそこのカフェで休んで行こうかな・・・














『ねぇねぇ、お姉さん一緒に遊ばない?』










・・・お姉さん・・ってあたしのこと?・・・









チラッと視線を送ると いかにも軽そうな男があたしの隣りに並んでいる。











・・・やだ、やだ・・・最低男・・・無視よ無視!・・・















足早にカフェに逃げ込もうとしたあたしの手を いきなりその男が掴んできた。










『はっ、離しなさいよ!!!』












男はあたしの腕を掴んで なかなか離そうとしない。






しばらく小競り合いが続いていた。







するとその様子を見ていたのか、カフェの中にいた長身の人が現れた。



その人は いとも簡単に男の腕をひねると、今度は長い足でその背中を蹴り上げ



あっという間にあたしを解放してくれた。











あまりにも俊敏な動きに驚くばかりで、言葉がでてこない。





するとその状況を見ていた周囲の人々から拍手喝采がおこった。










・・・とっ、とにかく・・・お礼を・・・











『あ、あのぉ・・・』











その人を見上げるも・・・ 帽子を深々と被っていて顔がよく見えない。











『あなた大丈夫だった?』












・・・・!!!・・・






・・・今の声・・・







・・・女の・・人?・・・









意外なこの展開にあたしもさすがに驚いた。





てっきり男の人かと思ってたから・・・












『あ、はい大丈夫です。ありがとうございました』










深々と頭をさげたあたしに、彼女は帽子を取ってニコッと微笑んだ。











その顔を見たとたん・・・



あたしの動きが止まった。




あたしに優しい微笑みを浮かべていたのは・・・


























〜キスの温度・第2章【さん】読んじゃう?〜

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temperature of the kiss〜キスの温度〜               第2章・【いち】

►2008/01/21 13:07 





カーテンの隙間から朝日が差し込んで・・・



明るい世界に引き戻されたあたしは 目覚ましが鳴る前にタイマーを解除した。




小さなあくびをしながら『まだ眠い』と・・・もう一度まくらに顔を埋める。




しばらく睡魔と格闘。




いつもならベッドの ど真ん中で寝ているはずのあたしが・・・




今朝はどういうわけか端のほうに寝ている。












・・・どうしてだろう・・・




・・・今朝は妙に冷えるな・・・




・・・まだ春先だからかな?・・・












眠い目をこすりながら、いつものように起き上が・・・・・・れない!!!





慌ててもう一度ベッドに潜り込んだ。





・・・ない・・・




・・・着て・・ない・・・




・・・パジャマ・・着て・・ない・・・




・・・おまけに・・下着も・・つけて・・ない・・・











//////あわわわわ!!!!!//////













今の状況が・・・




生まれたままの姿だってことに、ようやく気がついた。







被っていた布団の隙間からおそるおそる お隣にチラっと視線を向けてみる。











//////・・・!!!・・・//////















再び胸の鼓動が騒ぎ始めた。












・・・昨夜・・・泊まったんだ・・・










あたしの隣りでスヤスヤと寝息をたてながら 無邪気な顔で眠ってる。












・・・綺麗な寝顔だな・・・



・・・クセのある髪も・・・



・・・長い睫毛も・・・










見ているだけで幸せな気持ちになるのはきっと・・・




彼を愛しているから・・・






















初めて迎えた朝はやっぱり恥ずかしい。









///とっ、とにかく下着を・・・///









気づかれないように、床にそっと手を伸ばす。




脱ぎ捨てたままの衣類が 昨夜の生々しさを思いださせるようで・・・










///・・・昨夜、道明寺と・・・///




///朝から何てことを思い出してるんだ、あたしは!///




思わず顔から火が出そうになる。












指先から床下まであと5cm・・・




あと少しなのに届かない。





でも、このまま身体を落としてしまうと・・・




薄っぺらなあたしの身体が丸見えになってしまう。









恥じらいを選ぶべきか・・・




それとも・・・







残された道は2つ。




あたしが最終的に選んだのは・・・











・・・せーの!!!・・・











勢いよく手を伸ばしたけれど・・・


これじゃ身体が中途半端に落ちてしまって背中が丸見えじゃない!










・・・///きゃーっ!///・・・










・・・と叫びたいところだけど今は恥ずかしがってはいられない!







とにかく今は指に引っかかった下着を早く・・・




・・・早く拾わなくちゃ 起きちゃうよ・・・









『さっきから、何やってんだ?』










・・・ビクッ!・・・









背中越しから眠そうな声を聞いた途端、せっかく掴んだ下着をあえなく落としてしまった。












『///おっ、おっ、おはよう・・・///』












何も身にまとっていないあたしの口からは、その言葉しか出てこない。







・・・お願い、そのまま二度寝して!・・・












『・・・はよ』












大きなあくびをしながら低い声で返す道明寺。










なんだか・・・気まずい体勢。




気のせいか・・・背中越しから伝わる熱い視線。









・・・とりあえず・・・布団に戻ろう・・・








そう思っていた矢先・・・










『綺麗な・・・背中だな』











道明寺の長い指があたしの背中に触れて・・・



ゆっくりと なぞっていく。







///なっ、何!?この甘すぎる雰囲気はっ///










『///ちょ、ちょっと・・・くすぐったい・・・んだけど・・・///』










意表つかれた行為に あまりにも恥ずかしくて 道明寺に顔すら向けられない。











『昨夜のこと・・・憶えてるか?』












・・・///いっ、いきなり朝からそんなこと・・・言わないでよ///・・・











『///う・・・ん///』











コクリと頷く。










///忘れられるはず・・・ないでしょ///





///あんなこと・・・したんだし///












『すげー色っぽかったぜ』












『///ば、ば、バカなこと言わないでよ!///』











///もう・・・恥ずかしい///










・・・でも確かに・・




この身体あたしの身体じゃないみたいだった・・・




・・・どうしてだろう・・・




あんな気持ち初めてだった・・・




道明寺に抱かれて・・・



繋がることができて・・・



涙が溢れて・・・



とても幸せな気分だった・・・













『愛してる・・・』











背を向けたままのあたしを優しく抱きしめる道明寺の身体は温かくて・・・



まるでオブラートに包まれたような不思議な感覚。














『・・・あたしも・・・・あい・・・』












その先を言えないあたしに 道明寺が かすれた声で囁く。











『・・・続きは?』















『///・・・愛して・・る///』














誘導尋問のように・・・そう言わされたあとで・・・





道明寺のくちびるがあたしの首筋を這っていく。











『か・・・会社・・行かなきゃ・・・』









慌てて道明寺の長い腕を振り払おうとするあたしに・・・












『まだ・・・時間はある』












そのままベッドに導かれて・・・




いつしか その甘い囁きが媚薬になって・・・




再び腕の中に落ちてしまった。









































道明寺を送り出した後、あたしは慌てて職場に向った。





車で送ってくれるって言ってくれたけど・・・



やっぱりあの車は目立つし・・・



玄関に横づけされたりでもしたら・・・



社内中にウワサが広まってしまう・・・



だから丁重にお断りした。










あたしが就職したのは某有名デパート。



研修時期も無事終了し、期待に胸を膨らましてたのに・・・



希望してた部署に配属されることもなく・・・



なぜかランジェリーコーナーで働くことになってしまった。




最初は少し戸惑っていたけれど、職場の先輩に恵まれたせいか・・・



働くことが楽しくなってきた。



もともと接客業は好きだったしね。











今朝、道明寺に『どこで働いてるのか?』と聞かれて素直に


某有名デパートだと答えたけど・・・






さすがにランジェリーコーナーで働いてるとは言えなかった。




絶対に真っ赤な顔して怒るに決まってるもんね。



とりあえず、バレるまで内緒っていうことで。















『牧野さ〜ん、ちょっと手伝ってもらえる?』











大きな筒と冊子を抱えた奈緒美先輩がヨロヨロしながら声をかけてきた。













『なっ、なんですか?・・・これは・・・』







ひとりで抱えるには無謀すぎる膨大な量。


言ってくれたら手伝ったのに。


でも そんな男勝りな先輩が好きなんだけどね。










『新作ランジェリーのポスターよ。



そしてこの冊子はお客様用のカタログ。



今回のポスターはかなりの出来らしいの。



貼るの手伝ってもらえるかな?ひとりじゃ無理だから』













奈緒美先輩は息を切らしながら無造作にドサッとテーブルに置いた。









奈緒美先輩は年も近いこともあって仲良くさせてもらっている。


明るくて気さくで・・・何よりも尊敬できる憧れの人だ。









『それにしても大きなポスターですよね・・・』












マジマジと眺めてしまう。



まだ広げてないけど よくわかる。




こんな大きさのポスター今までに一度も見たことないもん。














『そうなの、特注らしいのよ。


今回のモデルがとにかくスゴイんだから』













嬉しそうに微笑む奈緒美先輩。













『牧野さん、そっち持っててね』







『了解です』









先輩が丸められたポスターを器用に広げていく。






その様子を見に来た同僚たちの歓声が上がる。











クールな表情でセクシーポーズを決める美しい女性・・・




まるで男性を誘うかのような大胆ショットにあたしの目は釘づけとなった。









・・・見ているだけで目のやり場が・・・












でも、見れば見るほど吸い込まれてしまいそうになるのは・・・なぜ?











・・・魅力的な瞳・・・


・・・艶やかな黒髪・・・





・・・この顔・・・どこかで・・・










その瞬間、ハッとした。









メークのせいで誰なのか全くわからなかったけど・・・









・・・もしかしてこの人!?


















〜キスの温度・第2章【に】読んじゃう?〜


























テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

短いようで長めなお話・The temperature of the kiss〜キスの温度〜 | Comment(0) | Top ▲

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