temperature of the kiss〜キスの温度〜 第2章・【はち】完結
その話を聞いた翌日・・・
彼女はブラウン管の向こうにいた。
多くのマスコミを相手に 行き過ぎた質問にも臆することなく、
ひとつひとつ言葉を選びながら慎重に答えていた。
その表情は決して暗くはなく、どこか ふっきれたような明るいものだった。
冷めたコーヒーを口にしながら その会見を観ていた。
今日は休日。
予定・・・なし。
朝からずっとパジャマのままでのんびり過ごしている。
道明寺からの連絡。
全く・・・なし。
・・・ほとぼりが冷めるまで放っておこうかな?・・・
・・・でも・・・やっぱり寂しい・・・
・・・ かけるべきか・・・かけざるべきか・・・
またケイタイを握りしめて・・・
しばらく自問自答。
・・・もう一度だけ・・・
ボタンを押そうとしたその瞬間・・・
ピンポ〜ン・・・
・・・ビクッ・・・
突然のインターフォン。
『ど、どちら様ですか?』
ドアの前で頼りない声を出してしまうあたし。
『どちら様じゃねーよ』
・・・!!!・・・
その声に胸が高鳴った。
『早く開けろよ』
少しイラついたようにドアを叩く。
『あ、えっと・・・
ど、どちら様ともわからない方を お入れすることはできません』
・・・あたし何言ってるんだろ・・・
突然やって来た訪問者に動揺していた。
『いいから開けろ!』
苛立った声がドア越しから聞こえた。
その顔が目に浮かぶ。
あたしはドアを見つめ・・・
そしてゆっくり・・・
手を伸ばす・・・
ガチャ・・・
『・・・道明寺』
『何・・・泣いてんだ?』
・・・えっ?・・・
その時ようやく気がついた。
自分が泣いてるということに。
・・・どうしちゃったんだろ・・あたし・・・
・・・いつのまにか・・涙腺弱くなってる・・・
『つーか・・・
なんでまだ そんな格好してんだ?もう昼だぞ』
『えっ?』
・・・キャァァァ!!!・・・
思わず自分の身体を抱きしめた。
本日のパジャマ。
セクシー系のナイトウエア。
去年の誕生日に桜子からもらったやつ。
かなりのミニで、決して他人には見せられない代物。
・・・道明寺が来るって知ってたら こんな格好なんて・・・
・・・と、とりあえず、着替えが先だわ!・・・
道明寺はそんなあたしをジィーっと見下ろしている。
・・・嫌な・・予感・・・
『そ、そんなジロジロ見ないでよ!
い、今、着替えてくるから!』
慌てて背を向けると道明寺があたしを後ろからギュウッと抱きしめてきた。
・・・ドキン・・・
『着替えなくていい』
背中越しから香る甘いコロン。
あたしのドキドキは最高地点に到達。
・・・でも今は この腕から逃れないと・・・
『///なっ、何言ってんのよ・・・離して///』
『・・・それは無理だ。
おまえがそんな格好してるから悪いんだぜ・・・』
と言ってあたしを離さない。
・・・もう・・・こうなったら・・・
ボフッ!!!
『くぅぅぅ!!!・・・ってーな!!!』
あたしの右肘が道明寺の脇腹に見事に炸裂。
道明寺がうずくまっている隙に 慌てて着替えを済ませ、
背後でブツブツ言ってる文句を聞き流しながら、ヤカンに火をかけた。
///危なかった・・あの勢いだと・・また・・・///
道明寺がいると思うだけで自然に笑みがこぼれる。
でも・・・嬉しい顔を見せてしまうと絶対自惚るに決まってる。
見透かされないようにしないと。
『とうとう・・・やったな』
点けたままのテレビを観ながら目を細める道明寺。
その表情はいつになく柔らかい。
『優菜さん・・・綺麗だね』
『悪かったな・・・ちゃんと答えてやれなくて』
申し訳なさそうに道明寺があたしに視線を送る。
『ううん、いいの。
昨日ね、優菜さんからいろいろ聞かせてもらったし』
・・・口には出せないけど・・あんたのこと見直しちゃったよ・・・
『そっか』
『そういえば・・・道明寺よりあたしの方がタイプだって言ってたよ。
面白いよね・・・優菜さん。
冗談ばかり言うんだもん』
あたしは苦笑しながら庶民のコーヒーを出した。
『・・・おい、それ・・・冗談じゃねーぞ』
一瞬にして表情が険しくなった道明寺。
『・・・何・・言ってんの?
冗談に決まってるでしょ?優菜さん笑ってたし』
・・・そうよ、笑ってたもん・・・
『ヤバイな・・・』
『えっ?何が?』
『絶対にヤベーよ!!!』
『だから、何が!?』
ハッキリしない道明寺にあたしは苛立ちを隠せない。
『あいつ・・・手を握ったりしなかったか?』
『手?・・・あぁ・・・うん。握られたけど・・。あと別れ際にハグされた』
・・・なんか不思議な気持ちだった・・・
・・・だって本当は男の人なのに・・・姿は女の人だもん・・・
・・・どっちに抱きしめられてるか わからなかった・・・
『はっ、ハグだとぉぉぉ!!!絶対に許さねー!!!』
いきなり怒り出す道明寺。
『優菜さん・・・今は女の子なんだし・・・そんなにカリカリしなくても・・・』
・・・別にイヤじゃなかったし・・・
『おまえな!隙ありすぎなんだよ!』
・・・カチン・・・
『ちょっとあんたね!その言い方おかしいわよ!
だいたいね、優菜さんは男の人が好きなんでしょ?』
あたしの声も荒くなる。
『あ、あいつはな!
ばい・・・ばい・・・ばい・・・』
何かを言おうとする道明寺。
でもその次の言葉が なかなか出てこない様子。
『何よ?ばいばいって・・・』
・・・全然意味わからないし・・・
『バイセク・・・
あぁ!!!めんどくせー!
つまりだな!あいつはどっちでもアリなんだよ!』
『へっ・・・?』
『へっ?じゃねーつーんだよ!バカ!!!』
・・・どっちでも・・・アリ?・・・
・・・何よそれ・・・
・・・!!!・・・
・・・それって・・まさか・・・
・・・バ、バ、バイセクシャルってこと!?・・・
あたしは気絶しそうになった。
・・信じられない・・・
・・・優菜さんが・・バイセクシャル・・・だ・・なんて・・・
・・・だからこの前・・抱きつかれなかったか?って言ってたんだ・・・
『優菜のヤロー!今度会ったら 絶対ぶん殴ってやる!!!』
今にもテレビの画面に飛びかかりそうな勢いの道明寺。
その姿はまるで子供。
いくつになっても全然成長してないなぁ・・・と ため息ひとつ。
でも、そういうところが案外可愛く思えたりもする。
とりあえず・・・
怒り心頭の道明寺を落ち着かせるには・・・
やっぱりこの方法しか・・・ないのかも・・・
・・・///CHU♡///・・・
ギャーギャー騒いでる そのくちびるを塞いだあたし。
不意をつかれた道明寺は耳まで真っ赤にして・・・しばらく硬直状態。
・・・効果・・あり・・・
・・・だと思っていたのに・・・
それが逆に道明寺の野性に火をつけてしまったみたいで・・・
今度はあたしに・・・
熱いキスのお返しを・・・
・・・どうやらあたしの負けみたい・・・
・・・やっぱりこいつには一生勝てないのかも・・・・
そういえばあたしたちケンカしてたんだよね。
すっかり忘れてた。
それじゃあ・・・
今だけ休戦協定結んであげるから。
・・・このキスが終わったら覚悟してよ?道明寺・・・
〜キスの温度・第3章【いち】行ってみる?〜





