キリ番・70001Hit〜恋しくて・後編〜(古川さまへ)
俺の目の前を涙を流しながら 横切っていく牧野。
・・・なんでだ?・・・
俺は悪くねーはずなのに・・・
責めたあとで込み上げてくる後悔の念。
『はぁ〜・・・泣いちゃった。かわいそうに・・・』
類がベッドに腰を降ろしながらため息を吐く。
その悠々さが俺の癇に触る。
『・・・いつからだ?』
自分が冷静にならねばと感情を抑えながら
敢えて聞く。
『だから、何が?』
類の口調も強くなる。
その目はいつもの類ではないことは分かっていた。
『牧野といつから付き合ってるんだよ』
『くだらないね・・・全く。
おまえにはガッカリしたよ。少しは成長したかと思ったのに』
『てめーにそんなこと言う資格があるっていうのかよ』
『おまえだって牧野を責める資格なんてないよ』
『何!?』
その一言で俺の感情は爆発寸前だ。
類も類で鋭い目で俺を睨みつけている。
どっちが先に手を出してもおかしくない。
『これ・・・なんだと思う?』
類が1冊の本を俺に手渡した。
それを受け取ると・・・
・・・何だ?これ・・・
・・・英会話?・・・
『これがどうしたっていうんだよ。
こんなもん関係ねーだろ?
話そらすんじゃねーよ』
俺はその本を思い切り床に叩きつけた。
『関係あるよ。
牧野がNYへ行くために必死で勉強してたんだ』
・・・牧野が・・・
・・・NYに?・・・
・・・うそ・・・だろ?
・・・信じられねー・・・
その話を聞いて一瞬頭が真っ白になった。
『そんなの・・・信じられっかよ・・・
第一全然連絡取れねーし』
『あぁ・・・
大学以外は朝晩バイト。
深夜までやってるときもあるみたい。
時間が空くと俺や総二郎、あきらの家に行って英会話の勉強。
毎日・・・睡眠不足。
2〜3時間しか寝てないんじゃないのかな?
これも全ておまえに逢いたいがために、
自分の身を削って頑張ってたんだ。
4年以上も待たされて・・・
でも寂しいなんて一言も口にしなかった牧野が
どんな気持ちでおまえに逢いに行こうって決心したと思う?
それが何だよ、いきなり帰ってきて・・・
理由もちゃんと聞こうともしないで自分の感情のまま
牧野を責めるなんて』
類の言葉はもう・・・俺の頭には入ってこなかった。
・・・いったい俺は・・・
・・・何やってんだ?・・・
・・・類が言うとおりだ・・・
・・・俺はあいつを待たせていたのに・・・
・・・それを忘れて連絡の取れない牧野に苛立って・・・
・・・勝手に男ができたって勘違いして・・・
・・・ちくしょう!!!・・・
・・・何やってんだよ、俺は!・・・
・・・また・・あいつを泣かせちまった・・・
・・・俺のために・・・
・・・あいつは・・・
・・・あいつは・・・
いつしか雨が降り出し始めた。
雨が静かにあたしの髪を濡らしていく。
あたしの涙もこの雨と共に流れていく。
愛してる人からの疑いの目と拒絶。
これほど辛いものはない。
深い悲しみがあたしを覆い尽くして暗闇へと誘う。
誰もいない公園のベンチに座りずっと震えていた。
・・・どうして分かってくれないんだろう・・・
・・・あたしの心は道明寺でいっぱいなのに・・・
・・・逢いたくて・・・
・・・恋しくて・・・
・・・ただそれだけだったのに・・・
牧野の後を追ったがもうすでに姿はなく、
先回りしてアパートに向ったが部屋の明かりはついていなかった。
しばらく待っていたが一向に姿は現れず 居ても立ってもいられずに
あいつが立ち寄りそうな場所を探し回った。
・・・こんな雨の中・・・あいつはどんな想いで・・・
そう思うだけで俺の心は張り裂けそうになった。
何度かアパートに引き返すも・・・やはり帰ってきている気配はなかった。
再び車に乗り込もうとしたとき、ぼんやりと街灯に照らし出された人影に気づいた。
・・・ま・・きの?・・・
降りしきる雨の中、その人影に駆け寄った。
傘もささず、ずぶ濡れのまま俯き歩く姿は正しく牧野だった。
足元がフラつき 今にも倒れそうな牧野の冷えたその身体を抱きしめた。
牧野は最初は何の反応もしなかったが、ようやく正気に戻ると
俺の腕から何度も逃れようと必死に抵抗した。
『離して、離してよ!
あたしのことなんてどうでもいいんでしょう?』
『・・・牧野』
『あんたなんか・・・あんたなん・・・』
抵抗する力が一気に抜け、
そのまま俺の腕の中で牧野は崩れ落ちていった。
『牧野、しっかりしろ!牧野!』
『・・・うっ・・・う・・・ん』
あたしが目を覚ますとそこは自分の部屋ではなく・・・
見覚えのある広い天井の部屋だった。
ふわふわの温かいベッド。
枕元には美しい花が飾られていて、
あたしのところまでその香りがほのかに漂っている。
そして・・・あたしの指先から伝わる体温。
視線をゆっくりとそちらに移すと、
そこにはあたしを心配そうに覗き込む道明寺がいた。
その瞬間あたしはベッドから起き上がった。
『か、帰る』
『ダメだ、まだ熱がある。いいから寝てろ』
『あたしのこと嫌いなんでしょ!だったらここにいる資格ないもん』
無理やりベッドから起き上がろうとするあたしを道明寺が必死で止める。
『いいから!つべこべ言うな』
そう強気で言った後で・・・
『ゴメンな・・・牧野』
トーンの低い声であたしに語りかける道明寺。
あたしはくちびるを噛みしめて何も言わず黙って聞いていた。
『類から・・・全部聞いた。
俺のために毎日頑張ってたってことを。
それなのに・・・俺・・・おまえを疑って・・・
傷つけちまって・・・悪かったと思ってる。
簡単に許してもらえるとは思っちゃいねぇ。
でも・・・許してもらえるまで・・・
俺、何度でもおまえに頭を下げるよ。
牧野・・・本当にゴメンな』
・・・ゴメンな・・その言葉があたしの胸に響き渡る。
あたしの頬に熱いものが零れ落ち、枕を濡らしていく。
・・・道明寺・・・
『やめて、やめてよ・・・あんたらしくもない』
身体を半分起こしながら涙を拭った。
『牧野?』
『もう、いいから。
そんなことしないで。その気持ちで十分だから。
あたしだって・・・あんたが疑っても仕方ない行動してたんだもん。
あたしこそ、ゴメンなさい』
『いや、おまえが謝ることじゃねぇ。
4年越しの約束を守れなかった俺のせいだ』
『違う、あたしのせいだから・・・』
『いや、俺のせいだ』!
『あたしの!』 『俺の!』
お互いにそう言い張って・・・ 同時にふきだしてしまった。
・・・やっぱりその笑顔・・・好きだな・・・
屈託のない無邪気な笑顔。
謝る道明寺より・・・やっぱり俺様の道明寺が方がいい。
『牧野・・・』
『ん?』
『愛してる・・・
ずっとおまえに逢いたかった』
道明寺の大きな両手があたしの頬を包み込むと
そのまま くちびるを重ねた。
あたしの瞳から溢れる 幸せの涙はもう止まりそうにもなかった。
指を絡ませ お互いを慈しむように くちびるを重ねる。
まるで逢えなかった時間を埋めていくように・・・
何度も・・・
何度も・・・
・・・道明寺・・・
・・・あたしもあんたを愛してる・・・
・・・誰よりも・・あんただけを愛してる・・・
『牧野・・・
俺、明日にはNYに戻らなきゃならねーんだ』
・・・ズキン・・・
やっぱり・・・そうだと思った。
『じゃあ、今度はあたしが逢いに行くから。
あとはチケット買うだけだし。いつにしようかな・・・』
寂しい心を見せまいと笑顔を取り繕うとするあたし。
『その必要はねーよ』
・・・えっ・・・
・・・それって・・・
・・・来るなってこと?・・・
あたしの表情が曇ったことに気づいた道明寺が
『来週・・・こっちに帰ってくるからな』
『・・・えっ?』
・・・帰って来るって?・・・
『やっと仕事が片付いた。
これでようやくおまえを正々堂々と迎えに行ける』
『・・・ホン・・・ト?』
・・・信じられない・・・
・・・どうしよう・・・また涙が・・・
『あぁ、本当だ。
まったく・・・俺が焦らなければ こんなことにならずにすんだのにな。
でも、まぁいいか。おまえの顔見られたし』
イタズラっぽくあたしに微笑みかける道明寺。
『そうだ、帰ってきたら・・・あの約束もちゃんと果たしてもらうからな』
『・・・約束?』
『俺を幸せにしてくれるっていう約束だよ。
まさか・・・忘れてねーだろうな?』
・・・///そう きましたか!///・・・
『///おっ、憶えてるよ・・・///』
『そうだな・・・
じゃあ・・・まずはその身体で俺を幸せにしてくれ♪』
『///なっ、何バカなこと言ってるのよっ///』
『今でもいいけどさ♪』
『///あっ、あんたなんて しばらく帰って来なくていい!!!///』
逢いたくて・・・恋しくて・・・
泣いた日々もやがて過去へと帰って行く。
これから新しい未来があたしたちを待っている。
そこには必ず幸せがあるはずだから・・・
脇目も振らず一緒に手を繋いで歩いていこう。
もう二度とその手を離さぬように・・・
しっかりっと握りしめて・・・
ずっと・・・これからも・・・
ずっと・・・
ふたりで・・・
長い長い愛の道を歩いていこう・・・
Fin
あとがき
70001Hitを踏んでいただいた古川さまのご要望で・・・
他の男性に横取りされそうになった司くんの嫉妬をテーマに・・・
とのことでしたが・・・
なかなかうまく応えることができませんでした。
ごめんなさい、古川様(涙)次回は必ず・・・!!!
70001Hit・・・今回は特例とさせていただきました。
古川様にはいつも温かい励ましのメールを何通もいただいております。
そのお礼もかねて・・・しゃおしゃおから贈らせていただきます!
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