心、ほどいて・・・第2話(雪乃丞さまとのリレー作品です^^)☆全23話☆
///CHU♡///
『行ってらっしゃい』
『///おう///』
いつものようにキスを交わして・・・
広い背中を笑顔で見送りながら・・・
姿が見えなくなるまで手を振ると ドアを閉めた次の瞬間、
言い表せないような寂しさがあたしを襲う。
ここで暮らし始めて1ヵ月・・・
毎日が新鮮で、新しい発見ばかりで
同じベッドで眠り、温かい胸の中で目を覚ます・・・
NYで始まった生活は幸せに満ち溢れていた。
でもそれは最初のうちだけで・・・
大学と会社のかけもちをしている道明寺は日々忙しく
深夜に帰宅することが多くなり、一緒に過ごす時間さえ ままならなくなっていた。
慣れないNYでの生活。
笑って話せる友人も・・・ここにはいない。
たった一人で過ごすには広すぎるこの部屋。
大きなソファーにゴロンと寝転んで本を読んだり、
翻訳機を片手に英語を独学で勉強したりするけれど、
それが終われば ただひたすら道明寺の帰りを待つだけの日々。
気分転換に散歩に出かけようと思っても・・・
やっぱり道明寺がいないと心細い。
銃社会のこの国に、あたし自身 そぐわない気がしていたけど、
道明寺と一緒に暮らす以上、慣れなければいけないと思っていた。
あたしが『寂しい』と言えばきっと心配して傍にいてくれると思う。
でも、それは口が裂けても 言ってはいけない言葉。
道明寺が選んだ道を邪魔するわけにはいかない。
あたしが勝手にノコノコとついてきちゃったんだもん・・・
『寂しい』なんて・・・今更そんなこと言えないよ。
ほんのちょっと寂しさを我慢すればいいだけのことだし。
道明寺にはつまらない心配と負担をかけたくなかった。
RRRRRR・・・
すでにベッドに潜り込んでいたあたしは その音で目を覚ました。
眠い目を擦りながら あくびをひとつ。
・・・誰だろ・・・こんな夜中に・・・道明寺かな?・・・
・・・ここに来てからほとんど電話受けたことないし・・・
・・・道明寺には出なくてもいいって言われてるけど・・・
しばらく鳴り続ける電話を見つめ、意を決してようやく受話器を取った。
覚えたてのつたない英語だけが頼り・・・
『・・・He・・llo?』
自信のない声で一言。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
・・・?????・・・
一方的な相手の話に
あたしの頭が一瞬にして真っ白になった。
何言ってるのか・・・全然わかんない。
話すスピードが速すぎて・・・
全く聞き取ることが・・・できないよ。
『今、何て言ったか 分かった?』
・・・えっ?・・・
・・・日本・・・語!?・・・
突然 耳にした母国語・・・
驚きのあまり、あたしの睡魔もどこかへ遠くへ飛んで行ってしまった。
『あ、あの・・・えっと・・・どちら様・・です・・か?』
『何、頼りない声出してんの?牧野』
・・・その声は・・・
『花沢・・・類?』
『久しぶりだね・・・』
一ヵ月ぶりに聞いた優しい声。
その声を聞いた途端 熱いものが込み上げてきた。
言葉に詰まってしまったあたしは それを堪えるように受話器をギュッと握りしめた。
『・・・って言ってもまだ一ヵ月だけど。
どう? そっちの生活は慣れた?』
『あ、うん。なんとか・・・ね。
花沢類は?・・・元気だった?』
『牧野が傍にいないから 全然元気じゃなかった』
『えっ・・・?』
『・・・って言ったら司、怒るだろうな』
電話の向こうで花沢類の笑い声が聞こえる。
『花沢類ってば!ふざけすぎだよ。
でも・・・嬉しい・・・。
道明寺以外の日本語 聞くの久しぶり・・・だから』
涙を堪えるあたしの声が少し震えている。
『何か・・・あった?』
花沢類の声が変わった。
・・・気づかれた?・・・
『う、ううん・・・何もないよ。
道明寺は相変わらず忙しいけど、あたしはのんびりさせてもらってるし。
・・・毎日充実してるよ』
・・・ウソ・・・
・・・本当は・・何をすべきなのか分からなくて・・・
・・・毎日もがいてるくせに・・・
・・・寂しさで押しつぶされそうなのに・・・
・・・充実なんて・・・してないくせに・・・
弱みを見せたくない自分がいる。
『そっか・・・。それならよかった』
それからあたし達はお互いの近況報告をしながら
束の間の会話を楽しんだ。
そして・・・少し間が空いて・・・
『それじゃ・・・またな、牧野』
電話が切れるその瞬間・・・
『はっ、花沢類・・・』
咄嗟に呼び止めた。
『・・・何?』
『・・・あっ・・・ううん。なんでも・・・ない。
それじゃ、みんなにヨロシクね。
・・・バイバイ』
静かに受話器を置いた。
『寂しい』なんて・・やっぱり言えなかった。
まだ1ヵ月しか経ってないし・・・
そんなこと言ったらきっと笑われちゃうよね。
花沢類も・・・
静さんを追いかけてフランスに渡ったとき、
今のあたしと同じような気持ちだったのかな・・・
これが俗に言うカルチャーショックなんだよね・・・きっと。
もう少し時間が経てば、この不安定な気持ちから
必ず抜け出せるはずだから・・・
あたしは強いから大丈夫・・・
だって、雑草のつくしだもん。
大丈夫・・・大丈夫・・・
自分に言い聞かせるように 何度も何度も その言葉を
呪文のように繰り返しながら・・・
いつしか深い眠りに導かれていた。
〜この続きは雪乃丞さまのHPにて どうぞ^^〜



