temperature of the kiss〜キスの温度〜 第1章・【いち】
やっと大学も卒業して・・・
これから一人暮らし満喫するぞ!!!
って思ってたのに・・・
なんで?
どうして?
・・・あんたたちがいるのよぉぉぉ!!!・・・
『なんで さっきから不機嫌な顔してんの?』
美作さん・・・あなたが一番大人なんだから・・それくらい分かるでしょう?
『そうだよ、せっかく俺たちが来てやったのに・・・』
西門さん・・・誰がそんなこと頼みました?
しかもあたしが入れたコーヒー不味そうに飲んでるし。
美味しくなきゃ飲まなきゃいいでしょ!
引っ越して まもないこのアパートに勝手に上がりこんできて・・・
住所を教えた覚えなんて一切無いのに・・・
なんなのよ!?
この情報網は!!!
情報部員はおそらく・・・桜子か・・・滋さんね(怒)
あぁ・・・どいつもこいつも自分勝手!
もう!イライラする!!!
『司、帰って来るって聞いた?』
ピクッ・・・
あたしの眉が動く。
『誰?その人?あたしそんな人知らないし』
思い出すだけで腹が立つ。
思い出したくもない。
せっかく落ち着いてきたあたしの精神状態を逆撫でするのはやめて!
『何言ってんだ?・・・明日迎えに行くんだろ?』
どうして当たり前のように聞くの?西門さん。
『誰が誰を!?迎えに行くっていうのよ!!!』
あたしはプイッと横を向く。
『まったく・・・おまえは』
美作さんが深いため息を吐き首を振った。
・・・ため息吐きたいのはこっちなんですけど!・・・
『仕方ないだろ?司だって仕事だったんだし。
しかも相手から・・・なんだし・・・』
美作さん・・・あなたは冷静にそう言うけど・・・
その瞬間をテレビで観たとき、手にしていたお皿割っちゃったんだからね。
あのお皿高かったのに!
あたしが怒っている理由。
約束の4年をかなりオーバーしたからじゃない。
仕事に打ち込んでいるの・・・知ってたし、
確かに寂しかったけど でもそんなあいつを心から応援したかったし・・・
信じて待っていたかった。
今年帰国するってメールが届いたとき本当に嬉しかったんだよ。
静さんの結婚式以来会っていないあいつがやっと帰って来る。
ずっとこの日を待ち続けていたのに・・・
なのに・・・
なのに・・・
どうして・・・テレビカメラのまえで・・・
・・・・あたしの知らない人とキスしちゃうわけ!!!???・・・
開いた口が塞がらなくて・・・
呆然と立ち尽くして・・・
涙が溢れて・・・全然止まらなくて・・・
すごく・・・悲しかった・・・
あの後、何度も電話、メールがうるさいぐらいきたけど・・・
なかなか連絡受けようとしないあたしに、きっとあいつは
最後の手段としてこの人たちを送り込んだに違いない。
『早く、機嫌直せよ』
・・・直せるわけないじゃない・・・
・・・あたしはそんな単細胞じゃないっつーの・・・
『じゃあ、明日な』
・・・行かないもん・・・
・・・迎えになんて・・・行くもんか・・・
・・・あんたたちだけ行けば?親友なんだから・・・
そのまま二人を見送ると
テーブルに置いたままのコーヒーカップを片付け始めた。
・・・ん?あれ・・おかしいな・・・
もう一度数えてみる。
・・・1・・・2・・・3・・・4・・・
今、帰ったのは・・・2人・・・
あたしを入れて3人・・・
じゃあ・・・この残りのカップは・・・誰・・・の?
・・・もしかして・・・
ベッドに目を移すと・・・
気持ち良さそうに寝息をたてている人物がひとり。
その姿にしばらく固まる。
・・・そういえば・・いたんだ・・・
来たと思ったらすぐに寝ちゃうなんて・・・
しかも買ったばかりの新しいベッドに・・・
そういうところ・・・何年経っても変わらないね・・・類。
・・・まぁ、いっか。そのうち起きるでしょ・・・
明日か・・・
とうとう・・・帰って来るんだ・・・
あんなシーンさえ観なければ・・・
今頃、嬉しくて嬉しくて居ても立ってもいられなかったはずなのに・・・
多分・・・相手の人が外国の人だったら許せたと思う。
だって外国の人ってごあいさつにキスするんでしょ?
でも・・・あたしの目に映ったのは純・日本人。
お父様は有名なIT企業の社長で・・・いわば・・・セレブなお嬢様。
しかもあたしと同じ年なのに・・・すでに世界で活躍しているスーパーモデルで・・・
とにかく容姿端麗・・・この言葉以外に当てはまる言葉はないと思う。
同じ人間だとは思えないほど。
その人を見たとき・・・敵わないと思った。
いくら仕事のパーティーでエスコートしたからといって・・・
キスまで・・・するの?
あのときのあいつの顔といったら!
真っ赤になっちゃって!
最悪!
バカ!アホ!ボケ!
おまけにその人とウワサになっちゃって・・・
しかも一緒に帰って来るってウワサ!
どうぞ、どうぞ・・・お好きにどうぞ!って感じ。
だから・・・もう・・・いいの。
あたしよりあの人の方がつりあうって分かったし。
とにかく今は・・・そっとして欲しいの。
それだけ。
あたしの心が少しずつ頑なになっていく。
これじゃ、まるで昔に戻ったみたいだよ。
・・・あんなバカ帰ってこなくて・・・いい!・・・
・・・一生帰って来るな!・・・
もう顔も見たくないのに・・・
想い出すのはあいつの笑顔ばかり・・・
どうして涙が溢れちゃうんだろう・・・
どうしてこんなに泣けちゃうんだろう・・・
洗ったばかりのコーヒーカップに
あたしの涙がポタポタとこぼれ落ちていく。
涙を拭うあたしの背中が急に温かくなって・・・
その体温はあたしを優しく包み込む・・・
背中越しの鼓動がこっちにまで伝わってくる。
『・・・の』
小さな声があたしの耳元に微かに届く。
その声で、誰に抱きしめられてるのか ようやく気がついた。
あまりにも突然の行為に身体が石のように固まってしまって・・・
もう次の言葉が・・・見つからない。
ふわっと香るコロンはあいつとはまた別の優しい香りで・・・
切ないぐらい あたしの感情に揺さぶりをかける。
信じられなかった・・・
今、起きている現状を・・・うまく飲み込めなくて・・・
ただ分かっていることは・・・ただひとつだけ。
俯き泣いているあたしを抱きしめているのは紛れもなく・・・
ベッドで寝ているはずの類・・・だった。
〜キスの温度・第1章・【に】読んじゃう?〜



